『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
はい、お通夜みたいです。
あのガキが発端みたいなとこありますけど。
「お湯が出るならガスが使えるって事なんで……食堂がもう少し機能すると思うんですよね」
混浴は……良くない?
プールの扉を開きかけて、おっと。
入るのやめておこうかなの男いました。
空気は読めますとも。
なぁんか、お通夜みたい……
「故障してお湯になってませんかねぇ」
ぼやいていた。
「やっぱり思います? 温泉……」
「ここが旅館だったらよかったのに」
やり取りを聞きながらも、それに触れないでいる。
触れた方が不自然で、ずうずうしいからだ。
温泉は欲しかった。
ここが温泉旅館だったらなって。
なーんか思ったより話長くなりそうだなあ。
なんて傍観者その1です。
外野が茶化してもねえ。
「あー」
「そういう重たい話なら、ちょっと離れたとこでしませんか?」
「シャワー使いたい人がしょんぼりするかもしれません」
あんまし色んな人が聞きたい事じゃないと思いますし。
言いたい事じゃ無いでしょ。多分。
彼らを死なせた人に。
殺した自覚なんて、あるのだろうか。
暗闇に乗じて、襲って、
そしてさよなら。後のことは闇に置いていく。
「……」
「プールよりも温泉が欲しいな……」
どうしようもないことは考えない。
考えるとして、もっと気持ちのいい方だ。
『……じゃあ、ぼくを襲ったのは、なんで?』
もうこの際だから聞いてしまう。追加で文字を描いた。
言わぬが花だけど、言葉にしたなら全部言った方が良いから。
「……!」
スケッチブックを見て、顔色が変わる。
そうして。
「そんなこと、するわけない…!」
と、首を横に振った。
ウソをついている人間のような、あからさまな動揺は見られない。
「おれは、そんなことしないよ……!」
促されて、クレヨンを手に取る。
スケッチブックを開く。
『殺した?』
赤いクレヨンで文字を描いた。
問いは簡潔だ。否定も簡単。声だってない。
どうしたって、相手の自由だね。
昨日と今日の違いはただひとつだ。
人が死んだこと。そして、その中に人間が混ざっていた事。
「………………」
自分だけなら、良かった。
化け物嫌いなのかなって、そう悲しく思うだけで良かった。
やり返そうなんて思わなかった。仕方ないから避ければいいって思った。
化け物と呼ばれるのが嫌だと思っても。嫌なら近寄らなけりゃ良かった。
それで済まなくなったなら話は別だ。
見上げられている。
流石にそこまで来られたら、そちらに視線を向けようか。
「……?」
「何、かな」
そうもなろうとも。
今日、君に。そんな眼を向けられる理由が、わからない。
「全てじゃないならちょっと損かもです。ここの水が綺麗か分かんないんで……」
身体中浸して良いものか分かりかねます。
んな事言ったらシャワーもなんだけど。
……何かがあったんだろうな。
その何かの内容は、察するには至らないけれど。
「全ては……難しいかもしれないですね」
「プールの中に資源でもあれば別でしたが……」
無口な君には、視線を向けない。
昨日もそうしていたように。
「……ありがとう、四季さん」
差し出されたものは、控えめに受け取って。
口に運んでいる。
落ち着いてくる、だんだんと。
部外者なんで何にも分かりません。
そんで特に気にしてません。鈍いのかもですね。
「まあそれで全てが平和になるなら……」
そんな訳無いですね。
この視線の意味は、語らずともわかるよな?
なぁ。わからなくても構わないけれど。
しらばっくれたっていいさ。
真実など、誰にもわかりやしないね。
しかし、唇よりも雄弁な視線が、刺さっている。
黒髪の青年に。
④子は玲依に食料品をおくった
「生むかー、ヘンを」
それって平和じゃないですか?平和、ですね。
何か玲衣も調子が悪そうなので。
脱……をしかけたところにガキの姿を見た。