『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
スケッチブックとクレヨンを抱えて戻ってきた。
どうやら贈ってもらえたらしい。
その足が、ぴたりと止まる。
いつもしていた一礼もせず、じぃと黒髪の青年を見つめていた。
「いいけど、平和じゃなくて変が生まれるよ」
和みはするかもしれないけど。
「わかった、……ちょっと待ってて」
そして、一度食堂の方へ。
「っ、あ……」
「四季、さん 藍くん……」
いつもの顔に、鼓動は少しずつ緩やかに、戻っていく。
深呼吸ひとつ挟んで。
「……もらおう、かな…」
「ずっと、何も食べてないや」
「……そうですね。往来を見て安心する事は、あります」
「キッチンの水道も動いてないから、流水の出どころはここだけですし。
色々洗えるし……」
「……温かくて平和ならここでだれか泳いでたんだろうな」
軽く思考が現実逃避に寄った。
清潔なプールも今は在るだけ。
「うーん……上着、どこで乾かそう」
濡れた上着を持って出てくる。
「……窓際に干せばいいか」
適当な場所に上着を干して、そのままプールを後にする。
それでも。だとしても。
怯えはしない。理由が分かるから。
共感の出来る相手がそこにいるだけなら。
怖いことは、何も無い。
「……薬は、足りてそうだけど。
大丈夫?……何か食べる?」
さて何人でしょう。
でも、犯人探しって意味ないと思うんですよね。
あの暗がりで襲ってきたものを正確にいなせる人間が、果たしてどれほどいるのかって話で。
──ああ、化け物達には簡単なのかも。
そう思うとフェアじゃない。
「玲衣くん、顔色悪いすね」
あらまあ。
レインコートの下、腕捲って包帯を巻いて出てくる。
着衣のままシャワーを浴びたのか、上から下までビチャビチャだ。
顔は青く、先ほどよりはマシといえど息も荒いまま。
「………………。」
果たして、このなかの何人が無害を装ったキラーなのだろうな。
怪我人の量からしても10では下らないだろうし。
怯えないという選択肢は、きっと無い。
「備えてるんですかね、休むのに」
「なんでもない人の行きかいがあるうちは、
……まだ、大丈夫なんだなと思います」
人に怯える必要はない。これからもそうであればいい。
玲依は玲依に医療品をおくった
「おっ、……と?」
「ぶつかりませんでしたか、すみません」
片翼の男は同タイミングの青年に頭を下げて、そのまままっすぐにシャワー室に向かった。
いくつかずれた場所、そしてすぐ、出てくる。
一度振り返ってからまたプールから出ていこうとするのだろう。
大丈夫、そのうち慣れるよ。イヤでも……。たぶん。
また視線を窓の外に戻した。
この合羽はどうやら雨を見るのが退屈しのぎになると思っているタイプらしい。
「……上着汚れたし、上着を軽く洗って、濡れた状態で身体拭けばいいか。
拭いた後また上着あらって乾かせば……」
どうしても直で水シャワーを浴びたくないらしい。
計画を立てつつシャワー室へと。