『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
う~んと首を傾げた後。
多分意思疎通に困らなかったからかも……。と思い当たった。
唇を指差してから、指で罰を作る。
その後に、両手で丸を作った。
喋れなくても問題なかったんだよね~! のジェスチャーです。
「あんだけ俺より優しそうな大人がいたのに何でまだ無いんすか?ガチ気になる」
割とこれも主題だったりする。
なっさけない大人達ですね。
喋れるけど喋らないの選択をしているのが申し訳なくなる言い分だった。
ちょっと眉を下げた。
親切にされるのは嬉しいけれど、
昨日のことが昨日のことだから、
信用して良いのかわからないんだなぁ。
でも本人に心当たりはなさそうだなぁ……。
こういうのを疑心暗鬼って言うのかもしれません。
「お喋りって出来た方が良くないすか?」
お喋り男はそう思います。
「喋る自由って誰にでもあると思うんすよね。まあそれには責任も伴う訳なんすけど」
「当然黙る権利もあります。全部言わなくても良いし嘘もあります」
「けど、無いならある方が良いと思うんすよねー。選べるから」
つまり、選択肢があった上で黙るのと。
端から選択肢が無いんじゃ不公平かなって思うんです。
お喋り好きなんで。
妙に優しくされる心当たりはあるのだけれど…………。
推測通りなら全然良い理由ではないんだな。
なのでずっと首を傾げている羽目になるのかもしれません。
「?」
奪われないなら、それで良い。与えられなくても。
なので、首を傾げていた。
「…………」
ファンシーなのは好きだけれど、
贅沢品を星がれるような状況でもない。
そっと首を横に振った。
「あんなに優しそうな大人達がいたのに可哀想な奴っすね……」
マジすか。ちょっとびっくりですよ。
あの時いたのは誰だったか。探偵のタンちゃんだったか。さてさて。
「でも直接買い与えてあげらんないんですよねーこれ」
玩具の中に塗り絵セットくらいありそうなもんで。
不格好なメモ帳より良さげなんですけどね。
女の子ってファンシーなの好きでしょ。雑。
「……?」
そう言えば知人なのだろうか。
もの言いたげな雰囲気に首を傾げた。
追加資源、今頃空っぽになってそうだな、と思う。
「あっ飯入ったっぽい?」
逃しちゃったかもしれません。ショックだなあ。
「そこのチビガキマリーちゃんは筆談に足るものを手に入れられたんすか?」
『空間内に不具合を確認しました』
『なんてこった!』
『これを原因とし、資源供給システムに追加の不具合を確認しました』
『資源供給システムに二件の不具合を感知。担当者は速やかに確認してください』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
「……………………!」
は〜い、ぴちぴちです〜。
普通の人間さんもお元気そうで。
「普通の死体……がある?」
「ちょっと、辺りを野次馬してきます〜。
では皆さん失礼いたします、どうもう」
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『……この不具合の原因って結局なんなんですか?』
『簡単な話だ。この空間はすべてを空間内で完結させている』
『……というか、そうならざるをえなかったと言うべきか』
『つまり……?』
『何も、資源は無から湧いてるわけじゃ―――』
ザザ、ザ……
『次の[快晴]は推定約六日後です』
また放送が流れ始めた……
「ロビーのモニターです。こっち来る途中で覗いてきました」
「何人かは知りませんが、ひとりじゃなかったみたいですね」
お喋りで寿命を縮めがち悪口製造機です。
化け物も人間も、今のとこ元気ですね。
ぴちぴちで。
「良かった。枕を高くして寝てね」
「……枕ないんだった」
というか布団もないんだった。
全員無事そうで良かった、と思う。
「………………」
のんびりとした人が登場すれば、途端に口を噤んだ。
「私もうるさいと言われないようにお喋りを控え」
「え"っ遺体が?」
そこまでは喧騒から聞き取れておらず眉を潜める。
「す…………」
「はい」
しばらくの静寂が訪れて消えた。
「なーんか誰か死んだみたいっすよ」
のんびり。食堂から出て。さて。
って思ったんですけど。
なんかどこもあんまですね。
あんまなんでとりまシャワーって事です。
まだ出ると嬉しいです。