『中庭』
雨の降る中庭。
石造りの噴水と、石のレンガによる舗装がなされた中庭。
緑はなく、殺風景。手前の方だけ庇がある。
空は一段と暗く、雨も降り続け止む気配は無い。
扉があいている
『記録[
雨粒が前髪に当たる。
角の先から滴って、地面に黒くシミになっていく。
銃口を空に向けた。
きっとここからなら、プールでも見える。
引き金に指を掛けて。
「……」
また、という言葉を使えません。
「ぁ、……さん」
再び、という言葉も使えません。
スーツを着ていないのだから気にしなくてもいいことですら、職業病というものは本心を鈍らせるものばかりでした。
「いってらっしゃいませ」
私があなたに送れる最期の言葉は、
どうかその生を全うした出口が、
雨の向こうで、光あふれる道であることです。
「はい」「……ええ。俺も」
「あなたたちと居るのは、本当に楽しかった」
「好きだった」
……悪くなかった。
色々あったけど。
26年と少しを憂いて。
たった数日が、こんなにも。
惜しいから。
「では、」
「いってきます」
踏み出す足は重たくない。
きっと、家の玄関を出る時よりは。
>>19510
「ふむ。では次逢ったときに賢者にしよう。」
来世も王をやるつもりみたいです。来世なんてあるかわからないけれど。
「初日に資源があった。DREAMの者かはわからんが、繰り返している可能性がある。最も、そうでないと良いが。
此処に迷い込んだ人達が可哀想だ。」
初日のこと、此処での出来事を考える。こんな苦行をさせられるのは誰だって嫌だろう。
「ええ。私は春さんが選べることを知っていますよ」
そしてこの先の道も、あなたが選んで勝ち取ったものだとも知っています。
「お願いしますね」
「私、結構楽しみにしているんですから」
「ふふ」
「じゃあ、お世話しあいっこしよう」
「それもきっと、楽しいよ」
どうか、平穏な場所で。
あなたの憂いも、晴れるような陽の下で。
自由に暮らして、出会って。
また、仲良くしようね。
「だぁいすきだよ、春さん!」
「またね!」
涙はきっと、要らないね。
めいっぱいの、大好きだけ詰め込んで。
あなたの門出を、見送るんだ。
>>19465
「全部…考察の中の話に過ぎませんけどね。
賢者なんてそんな、僕には畏れ多いですよ」
少し嬉しそう。もう遅いけど。
「あっそれは僕も思いましたね。
何年何回と繰り返して、犠牲者を増やし続ける。
そんな地獄みたいなループあってたまるかって感じですけどね。
今回だけであってほしいです」
本当に。
ぎゅ、って。
気持ちをたっぷり詰め込んだ抱擁だった。
フードの中の髪がくしゃくしゃになって、
でも、その感触すらいとおしかった。
「うん、うん」
「いっぱい、甘やかしてくれてありがとう」
「いっぱい、お世話させてくれてありがとう」
「ぼく、春さんが、大好きだよ」
「……かごめさんも」
「俺の選択」「預かってていてくれて、ありがとうございます」
背を叩く手の主にも、柔らかに告げる。
「見ててくださいね」
「弔ってくれるんでしょう」
「貴方に弔われるんなら光栄だ」
次は、なんの歪みも無い世界で。柵も無いまま。
お互い、まっすぐ生きられたらいい。
「……花の予約は」
「覚えておきますからね」
「ふふ」
ぎゅ、と抱き締めた。
今くらいはめいっぱい。頭も撫でて。
「本当にお世話になりました」
「情けないところばかりお見せしましたからね、本当に」
「今度お会いしたら俺の方から世話を……」
「それか、また世話になるかもしれません」
どちらでもいい。『次』があるならもっと平穏に。
憂うことなき世界で、自由に暮らそう。
拳銃を知らない……?いや、天使や悪魔の本物もいた。
古い人間や王がいてもおかしくはないだろう。
文化の説明が難しい、触れて慣れてもらうことにした。
「珍しい魔法だな、まず何だ。この形状は……。」
銃に興味があるみたい。あとで買ってみよう。出てくるかな。
「花歳だと、おれは王だ…。」
あなた達を見ている。
「精巧ですよね。俺もびっくりしました」
振ってみる。まだ中身は入ってる。うん。
まあ、準備なんてこれだけなので。
「…………」「花歳さん」
ぱ、と両腕を広げた。
「ううん」
「挨拶出来て、よかったよ」
気にしないで、と伝えて。
一度手を解いて、準備が終わるのを待つんだろう。
終わった後は、ぎゅってしに行くつもり。
最後にそうさせてって、お願いをしていたから。
「……いなくなった後に誰かの糧になるというのは、少し不思議な気分ですが」
「使っていただけたら幸いです。わずかでも、お役立ててくれれば」
悲しげでもない。
いつもの辛気臭い顔は、いくらか晴れて。
「本当に皆さんお疲れさまでした。…………」
さて、と息を吐いた。
準備しなきゃな、色々と。
「……そうだな。」
幼い貴方の笑顔を見て此方も微笑む。
「嗚呼。止めてしまい、すまなかった。」
そう言って貴方達に一礼した。
「うん!」
好きな人、たくさんいたし。
お友達だって、出来たし。
傷つけず、傷つけられず、生き抜いた。
随分上等な自由を歩めたと思うから。
そう思ってもらえるなら、
やっぱり嬉しいね。
「うん、赤いフードの人も」
「また、会えるよ、きっと」
あなたが好きな人。
もういってしまった人。
きっとまたねはあるよって。
希望に満ちた声で、そう唱える。
お願い事を、叶うよって言うみたいに。
>>19460
「……成る程。それがおまえの考察か。」
ほとんど合致している。しかしあなたの方がより良い。
深く頷いた。
「さすがだ。タンテイ。おれの国に来れば賢者として仕えさせていたのだがな……。」
しかし、もう遅いか。
「全て溶けたら、再生して、またこうやって誰かを招くのかもしれんな。」
「探偵さんも無事でよかったー」
まだ考察をしているね。
きっと、頭はくるくる回って。
たぶんそれって、生きてるってことだった。
だから、良かったね、って思う。