『中庭』
雨の降る中庭。
石造りの噴水と、石のレンガによる舗装がなされた中庭。
緑はなく、殺風景。手前の方だけ庇がある。
空は一段と暗く、雨も降り続け止む気配は無い。
扉があいている
『記録[
タバコに火を点ける。
此処は屋外だし、室内で副流煙だと騒がれるよりマシだと思った。
雨が降っている。晴れる事はないのだろう。
雨が降っている。坩堝の虫になった気分だ。
雨が降っている。白い目で見られている気がする。
それでもなお、踏み出す勇気の一つもない。
それにしても、結局この空間はどういう原理だったのか。魔法であるのか。
どの道死ぬだけ。くだらない考察をし始めた。
集中するためにけん玉であそび始めた。玉を持ち、持ちての部分をブンブン振り回している。
「……」
よかった。
小さく呟いて中庭を後にする。
何も変わっていない。雨が降っている。
男にとってはただそれだけでよかった。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
一歩、外へ歩みだす
体が溶け始め、バランスが崩れる
「...どうだ、チャン=ハン、誰が何と言おうと、私はお前を超えたぞ」
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている。
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている
一品物なんて無理ですよ。
あなた乱暴で全部壊しちゃうから。
全部意味は無くなりました。壊しちゃったから。
どうでしょう。やはりそんな期待ももう、する必要はありませんね。
「……………」「確かに」
確かに。頷きひとつでゆるゆる退散です。
行きがけにお望みのもの交換したりしつつ、ですが。
報いて欲しかったのはもっと前なんですけどね。
だから今は、それもあなたの自己満足とひとり遊び。
代わりを務めさせるのって意外に難しいの。
一品物で構いません。一品物が好きだった。
そんな趣味嗜好とかも、然程意味無い。
どれも出来ませんでした。過ちばかりでした。
天国にはお友達が居たらいいね。
遠目で見る分に丁度良い子とか。
あたしは居ないでいい。
「あなた、襲われる方なのにね」
こびり付いた血ごと掌掴んであげる。
いいですよ。連れられてあげましょう。
あたしが壊したあなたを愛さなくちゃ、
誰があなたの精一杯を報えるのでしょ。
代わりの服があれば良かったですね。
でも全部、結局こうなっちゃうんで。
あんま意味無いですね。
意味のある事、どれだけやれました?て話ですけど。
ひとを穴だらけにするような悪人ですから、あの世に行っても地獄でしょう。
藍は問題無く天国行きです。
「じゃあ証明します」
愛用しなくっちゃいけませんね。
個室に行きますかって、茶色く汚れた手を差し出した。
<s1>あなたが壊したあいを。
あなたは愛するしかないのです。
あなたが理解したあいでね。<
草履の鼻緒も随分傷んでいるし、
卸し立てだった振袖も大分染みが増えた。
この子達、あなたも、そろそろ眠りに就かないとね。
「……うん、」
でも、あの世にだって行けやしないのかも。
あたし、この世に留まってしまうのだもの。
呪いの人形って多分浮かばれないわ。
「藍くんに襲う勇気があんのぉ?」
「無いでしょ。意気地無しだもの」
あたしの言う通りですから。
あたしの言いなりしてくれてますから。
そんなあなたを、愛用しなくちゃいけません。
傘どころか何でもかんでも長期休暇で良い感じになると思います。
飯事終わって歩む人生は、全部あの世の話です。
幾らあなたが資源叩いたってね。
そんなもんは一生来ません。
「2個だけね」
はい。面白おかしいあなたに。
期待して。見つめて。勝手に好きで。
いるんです。
「羽毛布団はちょっと……高いかもですね」
余計に請求されたらどうしましょうね。
「良いですよ」「襲われても知らない」
別に。何でも。良いですよ。
全部あなたの言う通り
雨に蕩けるなら飾り物の傘も羽根を伸ばせましょう。
飯事が終わるなら漸く人生ってものが歩めるのかも。
そんな美談は大金叩いても買えないか。
「ふうん?」
「やった、二個お願い聞いてくれんのね」
あなたの好意に付き合ってやってるだけだから。
で、面白可笑しいあたしに惚れ込んでるだけ。
そういう筋書なのです。
「布団は欲しいよねえ、肌寒いんだもん」
「羽毛布団の頗る寝心地良いやつ」
「そだ、あたしが寝る迄見ててくれる?」
なもんで、得意の曲解だって見せます。
残念ながらここでは雨と蕩けるらしいです。
眠たい飯事は、もう少しで終わるらしいです。
「普通に汚いと思います」
耽美で堪能なら、素足の爪先じゃないですか?
「本当の毒なんじゃないんですか。確かめてないすけど」
「つゆちゃん我儘過ぎ」「……」
そうですね。尽くすの当たり前、なんですよね。
藍ってあなたが好きですから。
あなたってそれに付き合ってくれてるんですから。
「全部は無理です。2個だけね」
なんで、言う事聞いちゃうんですよね。
持ち主の遊びに付き合わされるのがお人形。
飽きられたら押し入れの奥で埃被ったり、
それか、袋に詰められて焼かれるだけ。
だから、こんなにも眠たい飯事を続けてる。
「あたしの靴は甘いに決まってます」
絵面だって良いでしょ。耽美で官能的で。
「はあ、それって本当の毒なの?」
「掛け布団に布団に枕が欲しいんだけど」
尽くすの当たり前なんだもの。
あなたってあたしが好きなんだから。
それをあなた、利口にやっていますから。
だって無機物に意思が宿る訳ないでしょう。
きっと持ち主がそれに何かを思ったから、そうなる。
だからあなたは今生きてて、眠たくて。
こんな話をしてるんです。
「どっちも不味そうっすね」
絵面も味も。
みんな冷たいとこで寝てますよ。
一部の人は毛布があるって言ってた気がしますけど。
「毒女がいて、色んなの汚されたらやだなーと思って」
「あー」「掛布団とかクッションくらいなら買っても良いですよ」
しょうがないなあつゆちゃんは……
出汁無い癖に
呪いの人形って意外と、人形の意思で帰らないのかも。
つったって少し経てばこてんと倒れちゃいますけれど。
「なんだ、あるんじゃん。けちな男だね」
「なあに?靴舐めたら良いの?草履舐めさせてやれば良い?」
旅館の模様替えなんて態々しようとか思わないから、
まあ、皆して冷たい床寝台代わりにしてたんだろうけど。
「気持ち悪……」
てんで説明になってないし。
これは正当性の伴う罵倒ではありませんか?
呪いのぬいぐるみかもです。
きっとそういうふうに定義されたからですね。
「あるにはあるけど……どうしようかな」
「つゆちゃんの態度次第っすね……」
それで解決するなら、きっともうみんな持ってるんです。
それか布団にマットレスに枕に毛布にシーツにって、全部別売り。
「タダだから」
廊下の絨毯です。
なぁんか、拾われて戻って来ちゃったみたいで。
捨てたままにしときゃ良かっただろうに。
「お風呂よかお布団のが良くなぁい?」
「出してよ、お金あんでしょ」
金貨で解決するにも限りがあろうもの。
多分、布団は出て来ません。
寝台に座布団すらも。
「?」「なんで?」
それは何なわけ?不審者じゃん。
そりゃあもう遊び尽くされぼろぼろのぬいぐるみのようですよ。
後は捨てるだけですよ。
「えー」
やだなーって顔。
布団出すなら自分が寝ますもん。
全然まだまだふかふかで寝たいですもん。
「ちぎった絨毯ならありますよ」
いつもなら飢えがなくとも飢えていたけれど。
噛み付いても血肉にならんもんですから、
腹に穴ぼこ空いてるもんですから。
「藍くん布団作ってよ。それであたし寝るから」
「床で寝るのなんて耐えらんない」
出来てこんな無茶振りくらいかも。
腹から湧いてこないなんて、やっぱり空腹なのかもしれませんね。
いつもならそうじゃないでしょ?
「じゃあ個室に行って寝たらどうです?」
「布団は無いすけど」