『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「折り合いが悪い人と仕事相手以外は何度か話したら友達じゃないですか?」
そこの口悪とは何度顔を合わせても友達ではないでしょう。
「こっちの羽も日本人ですよ〜?
……苗字は漢字表記で名前は平仮名の」
「そちらは随分平和な日本のようですね」
「はい、はい、はいちょっと失礼」
「シャワーだけ使いまァ~す。ど~も~」
和やかそうにしてんなァ~、和やかになったところかもな。
わかんないけどとりまシャワーだけ……
「ありがとう、藍くん」
受け取ってもらえたのを確認して。
もう大丈夫、と預けていた体を離した。
そのままどっかに行ったりはしない。
早歩きでやってくる。
普段とは違います、
目が赤い事に気づく人もいるだろう。
「ここだな……」
どこかの空いている
シャワー室に入っていった…
「クッソ!冷たァッ!!」
思わず叫ぶ。
「はあ〜〜?」
「ここに来てまだ吐いていませんよ?」
「ご遺体の前でも、ほら。平然としてましたし?」
一拍、言葉を飲み込む。
シャワーから出てきて、
自分の服で羽の根元を押さえ、溜め息。
「…………」
「……ちぃ……女性が多そうなので笑顔を繕っておきましょう……」
「友達?」
「……友達ですよね~」
ね~。葬儀屋さんの方角を見た。
「……ゲーセンしばらく行ってないな。半年くらいは」
「学生の頃はリズムゲームしに通ってたんですけど。
それこそゾンビゲーの筐体もあったなぁ……」
今はどうなのやら。昔は結構見たんだけどな。
>>8274
「ふふ。うん」
「大丈夫、見慣れてる」
ちっちゃな声でくすくす笑って。
「いいの? 嬉しい」
「ありがとう」
声が明るく弾んだ。やった~。
そっと受け取って袖でぽんぽんし、水気を拭う。
その後はいつものように、懐にしまうんだろう。
『撃ってるのかっこよさそう』
想像した。似合いそう。容赦がなさそう。
気の毒なあだ名に思わずスケッチブックを捲るのを忘れた。
そんなに……。
押し込まれている。食べ物が。
まあ頂いてあげましょう。
「媒体すか。格闘系好きだったなあ」
何でもない話。やりたくなっちゃうな。
ね。懐かしいですね。
人間みたい。
「俺も見るの好きなんすけどね、やっぱ自分で触りたくなっちゃう」
「バイ〇とか」
>>8252
「貴重な布を貸してくれるんですか?
……ちょっと近寄っていただけますかね」
「あ、セクハラじゃないです〜!
体つきには自信はありますが、ほら服着てます」
冗談をいいつつ、「どうぞ」と水浴び中に落ちてしまった湿った羽をあなたに渡すでしょう。
いらないのならそれで結構、目立つものなので誰かの目につく前に拾っておいたものですから。
ゲームは身近にあったけど、ゲーセンはなかったなぁ。
後ろから見てるのもきっと楽しいんだろうな。
想いを馳せている。こういうお話の方がそりゃあ好きだった。
「………………」
主人は元気かなぁ。心配してるだろうか。
ゲームばっかりして、掃除やご飯を疎かにしていないかな。
テーブルクロスを差し出した後は、少しの沈黙があった。会いたいな。
「画面酔い……子供の頃はしてたな……」
「乗り物酔いしなくなったのと同じくらいに平気になったんですけど。
葬儀屋さん、船とか新幹線とかでも酔ってませんか」
葬儀屋への偏見シリーズが出来つつあった。
「昔は誰かがアーケード筐体に向き合うのを、
後ろからじっと眺めていたりもしたっけ」
万一気づかれてたら割とビビるだろうな。
茶トラも見る。なんであのゲームの猫の鳴き声、あんなに可愛いのか。
「意外と、あるのかもしれない」
「出たらやりたいこと」
難儀している人がいるな……。
あ。と思いついた顔でシャワー室の方へ寄った。
とんとんと扉をノックして、畳んでしまっていたテーブルクロスを取り出す。
よいしょと差し出すだろう。
羽根の乾燥にお使いくださいの意だ。
はい。化け物カウントされていない化け物の自覚があるやつです。
化け物カウントされていないのすら知らなかったらしい。
水タイプがらしいのは、そうかも。
『双剣が好き』
『猫、かわいいよ』
猫の絵も添えた。茶トラっぽい。
「あは。そうかも」
男子に好かれる傾向にある、という事ではそうかも。
「ヘビィボウガン……渋いなぁ。俺は全然使えなかったからすごいや」
「俺はもっぱら弓か操虫棍でしたね。昔のはあんまりやってなくて」
……こんな話をしたのは久しぶりかもしれない。
「誰かのやってる画面、それはそれで面白いですからね。
俺もRPGの類はそうだったな……」
「薔薇の花みたいな服、ありましたよね。
あれは埒外でもいいなって思ってみてました」
最近は猫だけじゃなくて犬もいると聞くし。
惹かれてしまう。ちょっとずつ。
「なんで私がシャワーしてる最中にいっつも新作が出る度に買うのに画面酔いをして最初の狩りもろくにできないゲームの話ししているんですか〜〜……」
バサバサバサッ!
万年採取クエストだけが顔だけ出した。
どうやら羽だけ洗っているようで服は着ている。
「……スケッチブック見えにく……。
横着するのはやめます」
……ポタポタ……。
首を戻して静かに乾かします。
変わらず玲衣を撫でつつ、何でもない会話をしましょう。
レイシストですが、別にサディストじゃあないんでね。
「四子ちゃんもやってみたら良いと思います。採集クエとか簡単すよ」
「猫と蜂蜜集めたり出来ますし、可愛い防具とかも最近増えたんすよ」