商業通路(西)
改札外西側。
主にチェーン店やレストラン・カフェなどが多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「あー、そういうタイプもあるんだ」
自分の声で助けてと、子供の声は聞き及んでます。
新しいタイプだね。ニュータイプだね。
「俺ですか」
「はい、何とも無いです」
「俺やっぱ何も見えなくて、聞こえなくて。
掴まれたりもしないし」
だから落ち着いているのかも。
「まどいさんじゃん!他の人は……杉森さんとウヅカさんね!驚かせちゃったらゴメン!」
「いやぁ、おーいって呼んでる声したから探したらさぁ、急に耳元でおいって言われて!」
「こわかったあ……」
「ヒェッッ」
悲鳴を上げる声にまたビビる。
些細なことで心臓が爆発しそう。
「こ、こ、こ声!?」
でもこうして声を交わしているんだよな。
恐怖の境目とは曖昧。
「なんか、ずっと、足掴んでくるぬるっとした感覚あって……」
「はい、ヒト…です!」
「そっか、間戸さんっていうんだ」
ばくばく跳ねる胸を押さえながら灯りの元へ。
点灯しっぱなしだった懐中電灯を切る。
「おつかれさまです、怪我とかはなかったけど……」
「あたしは杉森です」
若干、かなり歯切れが悪い。続いて自己紹介を苗字だけ。
「はい、夜浜さん、ウヅカさん」
「お疲れ様ですー」
駆けてきた人にも、へたり込む人にも。
ぺこりと軽く頭を下げた。
「大丈夫ですか?」
「何かいっぱいいましたか?」
懐中電灯の光の中で手を上げた人。
脚のあるちゃんとした人。
脱力してそのままその場にへたれ込む。
「ど、どうも………ウヅカ、です……」
「はい、人の間戸ことまどいでーす」
こっちこっちーって言うみたいに、
懐中電灯に照らされた男が手を挙げた。
眩しいとは、思わないな。
聞こえてくる声にまた小さな悲鳴が漏れる。
此処には他の従業胃員が居るのだから、人の声がするのは当たり前なのだが。
ライトをそのまま声のする方に向けてしまうかも。
「あ、う、あ………ひ、ヒト!!」
見れば分かること。
「あはは、また何か出ちゃったんでしょうか」
灯りの下に出れば懐中電灯を片付けて、
お仕事終わりの皆を迎えます。
「お疲れ様ですー」
「怪我とかは無かったですかー?」
「……ひっ!?」
突然走って来た何かに喉から引き攣った声が出る。
そろ…と目を開け懐中電灯の灯り向け壁の方を見る。
これはちゃんとした人だ。
聞いたことのある誰かの声もして、ほんの少しの安堵。
きっと他の人達と同じように。
暗闇の中を懐中電灯ひとつで歩いて。
違うのは何も見てなくて、聞いてなくて、
現れなくて、知らないだけで。
「おー、大丈夫そうですかー?」
聞こえた声に、灯りに。
トンネルの出口みたいな通路に顔を出す。
「時々イヌの首輪だけとか壁に落書きとか変なものがある時もあるな」
「割と実体のある変な物はむしろ視線より助かる。気のせいじゃないから」
色々に出会いすぎて感覚がおかしくなってきている
「うーん」
「今のところはこれといった異変はなさそうですねぇ」
懐中電灯片手にきょろきょろ。
視界の端がまたちょっとおかしい気がするけど、まだ気にするほどのことではない。
「おー、活きがいいなぁ兄ちゃん」
「見つめ返してやろうぜ。ハハ」
自分はしないけど……というか、視線が多すぎてどこから見られてるのか皆目見当もついてない、が正しい。
【道具使用】
鏡野ヨツヤ は 懐中電灯 を使った。
懐中電灯は正常に点灯している
「おうおう、なんか酷い目に遭ったっぽいやつがいっぱいいるな」
「何かが見ている……?」
「……オレも同じ体験したかも。やっぱ気のせいじゃないよな?な???」
業務2回ですでに正気が怪しい。
溜息。業務にあたった人の怒りや疲労が目に見える。
「本当、何されるっていうんだよ……」
資金全てを費やして買った懐中電灯。自費で出す事に特に躊躇いはなかった。
一歩踏み出す。
「ハァッ……くそっ……!」
見回りの帰り道。
宙に浮かぶゲーミング首輪と犬の鳴き真似をする人間?には「変態か?」と苦笑してはいたのだが。
業務を終え帰って来てみれば、増えている。視界に映る、己を覗く大きな目が。
「なんだってんだよ……!」
適当な壁に拳を打ち付けながら焦燥感を顕にして
「ハァ………… なーんか……」
「このバイト始めてからすげぇ調子悪いと言うか……。」
なんか、なんだろうな。視線を感じると言うか……。