商業通路(東)
改札外東側。
主にジュースやパンなど、持ち帰りの飲食店が多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「しっかりしろよなー、敷島サン」
「さっきはガキもオトナも関係ねーとか言ったけど……
普通に頼れるカッコいー大人は見せてもらいてーもんだし?」
はい、だからがんばってねーと雑な応援。
「駄弁りながら声をうまい具合に無視できるようになれよー」
「どーせ明日も明後日も俺はここでタバコ休憩してんだしさあ」
どっか行ったりせずちゃんと顔出せよな、ということだ。
もちろんこれは御手洗さん宛の言葉でもある。
しっかりそっちにも目を向けとこう。
「んなアタシを人を叩く趣味のある人間と言うみたいな……」
どうだろう。実際殴る蹴るに抵抗が無い方の人間なのはそうかも。
「死んだら終わり、については同意するけども。
とりあえずその『聲』を話を聴くのを止めな?
人のことってか。アタシのことを何も言えなくなるからな?」
美人とイケメンたぁこれまた調子の良いことを、とかちょっと思ってるかも。
それはそうと彼女はチョロいので。
アラシさんに対する好感度は少しだけ上がった。
「人を叩く趣味はないよ…転ばすか抑え込みで精一杯だもの
柔道だし」
柔道経験者なので叩く殴るより締めたり押さえつけたりが主流になってしまうのが難点
殴る蹴るの様な直接的な負傷を避けれる格闘技ではある
「死んだら終わりだし…?
聲達が喧しいけど同意はしてくるな」
しなやす精神やめなされ
「おーい、美人とイケメン達の言葉をまず一番に優先しろー」
「よくわかんねーもんの言葉聞くなー俺らの方が絶対マシなこと言ってんだからなー」
「ええはい。覚悟しといてくださいね。」
言いやがった。
「……逆も言っときましょうか。
アタシがまた頭おかしくなってたら、躊躇無く頬引っぱたいといて下さい。
今回みたく転ばすとかでも良いですが。
……パンチとかは勘弁して下さいね。普通に死にかねないんで。」
それはそうと。
「待てコラそれはどういう意味だ。」
その爆弾発言はなんだ。
死ななければ安い、ってか?
「やばくなった時は…うん…やってくれて構わないよ」
今とかは嫌です、正気だもの!
「…まあ、死なないならいいんだよ
…聲達もそう言ってる」
オイコラ、早速、耳を傾けんな
とまれ覚悟はするだろう
「ちゃんと死なない程度に留めますって。
というか張り手で人は殺せないんじゃないかな……」
蹴りならいけるかも。
「メンタルねえ……少なくとも、幻聴放っとくよりかは圧倒的にマシでしょうよ。
まあ今は良いとして。……やべえ時は躊躇無くやりますからね。」
つまるところは「覚悟しろよ」ということだろうか。
「こんだけバイトがいるんだから大丈夫だろ、多少は」
たぶん
「記念にもらっとけよビンタくらい」
「手加減してくれるって」
た、たぶん
「黒帯持ちの御手洗ちゃんの張り手とかおじさん死んじゃうって…
メンタル含めて」
女性からビンタって結構精神的には堪えましてよ???
「いやあやるならやっぱり頬をペチンと一発……」
そんくらいやらないと衝撃としては足りないだろうし、ね?
「サボろうにもどうやって勤怠管理してるかも分からないのがねえ……まあどうしようもない時は休むしかないけども」
「やるならせめて背中くらいにしてくんない?
大怪我したら本末転倒だし」
注文!でも背中の方がまだ耐えれるから…
「なーんでお互いにおしまい街道突っ走ってんだかねー
訳わかんないや」
「マジで敷島サンそんなんでよく格好つけようとしてたな……」
だいぶ来てるじゃんそれ
ビンタされとけほんとに
「マジでバレねーように上手にサボれよー」
「バイトってのは如何に上手くサボるかが大事なんだぜ」
「アタシに任せな。
ビンタでも良いなら手加減はできる。」
空手黒帯の実力、見せたる……
「……という訳で一発要ります?」
冗談半分でそう問いかけようか。
冗談半分、ということは。半分はガチということでもあるのだが。
「アカンアカンアカン!!!」
明確にもうダメじゃねえか!!!
「……お互い人のコト言えませんね、ハハ……
ええ気を付けますよ。気を付けますとも。
最悪巡回もバレない程度にサボるんで……」
乾いた笑いだ……
「ああそうそう、さっきソレで正気に引き戻された身なんでよーく分かるんですが。
痛みは効きますよ、やっぱり。
なんで適当に引っぱたいたり殴ったりするだけでも、救える命はあるかも……って。」
「暗いのや怖いのが安心するってヤバくね…?
ホント気をつけた方がいいよ…」
自分は特にそんな変化は今のところない。
やっぱりマシな方なのだろうか…
「……実は安心感すら抱いている
声のままについて行ったら何かが変わるかもしれないといった期待感とか未だに離れないね」
着々と汚染されてそうである
「暗闇の中で安心感も大分不味いと思う
明かりは持っておきな…」
「……。」
「マジかよ怖」
「うわー……経験者が言ってるのやべー……」
大丈夫なのこの人たち。
そんなこと言いたげな目で
敷島さんと御手洗さんを見ている。
本当に大丈夫なのこの人たち。
「……敷島サンも香里ちゃんもさー、マジで気をつけてな?
ほどほどに気抜けって、巡回中じゃない時に」
「全然武勇伝になんねーからね、コレ」
むしろドン引き案件ですよ。
ひとつ付け足すとするならば。
さっきの食事で多少マシになったとはいえ、暗闇を恋しく思うのは、今もそうだ。
懐中電灯の明かりが眩しい……
「ま、そりゃそうだ」
幻聴については嫌悪感も悪感情もないが…
否、抱かなきゃダメなんだろうな
「………助けてもらう、ね
出来そうな時はそうするよ」
「…………」
数秒の沈黙。
「……幻聴は今までに聞こえてないんで、確信を持ってどうこうとは言えませんが。
多分ソレはヤバめの兆候ですよ。
普通なら恐怖だとか嫌悪感だとかを感じる現象に、何の感情も湧かないか、逆に安心感を抱くだとかは……」
数拍置いて、続きを話す。
「ついでにアタシのパターンがどうかも言っときますが。
アタシは暗闇に安心感を抱くようになりましたね。
寧ろ明かりが眩しいというか。」
「まあ、そんなこと言われても確かに困るけど」
寺生まれとかでもないので対処できないけど。
出来て引っ叩くくらいかな。
「自力でどーにもなんねーなら他人に助けてもらうしかなくね?」
「自分で耐え続けるとかマジでないだろー、キツいしだるいって」
でも早めに他人に引っ叩いてもらって
どうにかなるものもあるかもしれないし
「だって、どうせバレるし…幻聴というか何というか、かな…
ずっと耳や脳内に響いてくると言うか…でも悪感情や嫌悪は無い
不思議なもんだね」
「はいはいコレですね。ありがとうございます。」
メモ……は無いけど、こんくらいなら覚えてられるか、とチャンネルの数値を脳内で反芻する。
それはそうと。
「おい待てコラ今何か聞こえたぞ」
今「幻聴」って言ったな?