商業通路(東)
改札外東側。
主にジュースやパンなど、持ち帰りの飲食店が多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「帰ったら思う存分食いな〜…」
自分は…なーんか食欲沸かないなぁ…となってる為、駅弁がまだ残ってたりするが
…ツナ缶1つと梅おにぎりで我慢…
「ですよねー」
まあそりゃそうでしょうね、と本人も分かっていた様子。
あくまでも悪あがきである。
「次からはこうなる前に言いますよ。
まあ対処法が分かったらもうこっちのモンだけど。
帰ったら懐が冷えるまで爆食いしてやる……」
「言った所で…はあるんじゃないかなぁ…
おじさんとか幻聴まで聞こえ出したし…」
今も喧しいのだ、此方においで、此方に来いと
従ったらきっと無事では済まない予感はあれど
いやに魅力的に聞こえ感じてしまうんだ
「御手洗ちゃん、往生際が悪い
それ言ったらおじさんもノーカンになっちゃうでしょうよ…」
睡眠時間もだし最低限の食料は食べてたもの
「はいはい…じゃあチャンネルはこれね」
トランシーバーのチャンネルを貴方に共有して…っと
なんかあったら此れで助けを呼べれそうだ
互いに近くに居たら、になるけど
「ノーカンになるか、それ……?」
ちゃんとやってたみたいだけど……どうだろう……
「普通に限界そうヤバいー、ってああなる前に
言えたんじゃないかな……とかも思うけどなあ」
まあ言い難いことでもあるか。
変なのが見えてる、とか変な声が聞こえる、なんて。
普通じゃないし。
「アタシにだけは言われたくないでしょうが。
シキシマさんも、他の皆さんも。お互い気をつけましょうねえ……」
でないとあんなことになるぞ、という反面教師にはなったかもしれない。
「『ここの飯を食うことが重要だと知らなかった』でノーカンにはならないっすかね。
睡眠時間もちゃんとしてましたし、自前で持ってきたヤツも栄養と量はあったんで。
自己管理しようとしたドリョクは認めていただきたい。」
悪あがきである。
「まあそうしましょうか。
でもまあとりあえず、メインで使うチャンネルは教えといて貰っても良いですか。
緊急用に覚えておきますんで。」
近場に居ないと使えないことには違いないが。
知らないよりは知っておいた方が良いし。
「…まあ、これに関してはお互いに録な自己管理出来てないで1つ手打ちかなぁ…」
実際、互いに心配して自分を疎かにしているという話
相互監視した方が余程いいかもしれない
「効果範囲は10mだってさ…まあ、高いヤツは必要になったらで良いでしょ
んじゃまそうする?会話しながらでも調査は出来るし」
互いになんかあったらその都度対処したらいいしと
「うーん、反論が何も思いつかない。」
実際その通りだし。
人の心配をする前にまずは自分から、というのは常識だろう。
「……普通にアリですね、ソレ。正直一人で歩くのはしんどいですし。
ただそのトランシーバー……有効範囲小さかったような。
業務用のたっけえ方はどうか知りませんが。
それならもう時間と場所決めて待ち合わせした方が良いんじゃないです?」
それはそれとしてトランシーバーは買いますが、と付け加えて。
「・・・はぁ〜そういう狙いだったりするワケ〜?…まあ、良いけどさ…」
そりゃ相手にそうしておきながら自分が下りたら大変だろうて
色々とさ
「いや、余裕で香里ちゃんほどじゃないっしょー」
どっちの方がよりマシ、という話でもないが。
「つーか、他人にああやっておいて自分はもうダメですーなんて」
「するわけねーよなあ、敷島サン」
「経験って馬鹿にならないよねー…まったく」
知り合いのことかなぁ…とか思いながらも
お陰でバレましたよ、ええ!
「重症度合いで言えば御手洗ちゃんの方がやばいでしょ…おじさんは呼びかけてもらって何とかなったし…
…そんな心配なら連絡取り合うとか同行する?いっその事」
其れはちょっとなのか
それはさておき
トランシーバーをちらつかせながら彼女に1つ、連絡の取り合いと同行という提案を提示する
そうでもしないと彼女からの懐疑心向けられたままになりそうだから
「アタシの場合は経験に基づくカン、とでも言おうかな。
にたよーな誤魔化し方しやがった奴を知ってるんだよ。
……あン時は、何も言えなかったんだけど。」
最後の所は、小声で呟いた。
「……アタシが今こんなことを言える身分じゃないのは、承知の上なんだけども。
さっき頂いたヤツ、アンタが食うべきだったんじゃ……」
自分もやらかしている側の自覚があるので、ちょっとの部分の深追いはしないが。
どうやら信用してはいないらしい。
「……書いてたねぇ…」
どうとでも出来るってか
まったく末恐ろしいわ
女の勘含めて
「……まあ、ハイ…ちょっと疲れてますよ〜…」
あ、観念した
ちょっとだけという主張に乗りはしたけど
「清澄くんよろしくー、俺アラシな」
ついでに自己紹介もしとこ
「バケモンの仲間入りとかマジ勘弁だろ」
「やっぱ一発殴んなきゃ気が済まねーって」
「女の子の勘って奴?マジでヤバいな……」
男の隠し事ってなんでこうバレるんですかね。
下手に誤魔化しても余計拗れるんだよなあ、こういうの。
「……敷島サンもちょっと疲れてるっぽいよー、って話」
「ま、流石に真面目に巡回してりゃ来るもんもあるっしょ?
てか真面目にやっててピンピンしてる方がやべーから」
「……ギョウムジョウの必要が生じた場合、通知、説明、同意を要することなく。
本契約の全部、または一部を変更できる。」
「契約期間中に発生した、身体変化、精神の変調、失踪等について、一切の責任を負わない。」
「……そんな感じのこと、書いてませんでしたっけ。」
なーんでこうも知りたがるかねー!となってる
端的に言えば内心慌ててます
知られたらタダで済まなさそう
「そんなんだったら社会復帰云々に触れちまうでしょうよ」
食べた時点で社会復帰不可とか
「アタシは御手洗香里。
キヨズミさん、ね。覚えとくよ。」
「こんな状況で悪いけど、どうぞよろしく。」
軽めに自己紹介を返す。
「もしヨモツヘグイだったら
バイト終わっても帰してくれないってことじゃん…
そんなのヤダーッ!!」
さすがに幽霊が出ると伝えないバイトでも
そこまでは…ね…?
「……ほう?」
何か勘付いたな?
「何か隠しましたね今。……アラシさん、さっきなんて言ってたんです?」
あっ!本人が言いたがらないなら遠慮無く第三者に聞くスタイル!
「あー思い出した、それだそれだヨモツヘグイ。
……なんかソレっぽくないです?ここの飯食ったらメンタルが安定する、っていうの。
ここにあるまずいモノに慣れてしまう、というか。なんというか。」
「んー?別になんもー?」
口笛でも吹くかのように軽々と。
何度も繰り返すことではないし。
兎も角安全そうならそっちの方に寄って行こう。
「うわ、やめてなんかそれヤバい話でしょ絶対」
「俺ここのだいぶ食ったり飲んだりしてんだから」
詳しくは知らないようだが
なんとなく嫌な話だと察知した様子。
「何でもねーですって」
御手洗ちゃんは心配性なの知ってるからかバレたくないらしい
そういうところやぞ
「黄泉竈食よりマシでしょうよ
やだよ、御手洗ちゃんが壊れる様見るの」
誰でも見たかないがね
「いやあホントすんません。ご迷惑をお掛けしました。
怪我は大丈夫そうかな。ちょっとまだ足は痛いけど許容範囲内……」
遠くのアラシさんにも改めて謝罪をひとつ。
敷島さんみたく直接の害は与えていないはずだけれど、驚かせてはしまっただろうし。
「そこのアンタは……存じ上げないけれど。お騒がせしました。」
そしてこのタイミングで清澄さんの存在に気が付いたらしい。
こちらにも軽めの謝罪を投げる。
「……?何か言いました?」
アラシさんの呟きは上手く聞き取れなかったらしい。
敷島さんのその後の反応から、何か言ったらしいことは判ったが。
「精神安定剤、ねえ。……それはそれで食う気失くすなあ…………」
その地のモノを口にすれば、その地に染まってしまって戻れなくなる、みたいな。
そんな話をどこかで聞いたなあ、と考えを巡らせる。
まあ、コレを食べなければ精神が壊れることは明白なので。食べる以外に選択肢は無いのだが。
「香里ちゃん、もうだいぶ落ち着いた?マジで勘弁してくれよなー」
「幽霊倒すにしても物理的すぎっしょ……怪我とかしてねーよな?」
敷島さんが上手いこと抑えてくれてたみたいだから、
たぶん大丈夫だろうけど。
「なんかさー、ここの飯って別に特別うまくはねーけど……」
「普通だからなんかな、食うとちょっとホッとするよな」