コンコース(東)
改札内広場の東側。
椅子がたくさんある待機所などがある。
ホームへの登り階段・エスカレーターもある
「いいよ?有料でも」
ぎゅうっと携帯灰皿の奥に押し込んだ。
ケチで阻めるのって、相手が根っから物乞い目的の時だけだね。
「だってまだ柴さん以外の喫煙者知らないんだもん」
「そんじゃ、どうもねェ~」
吸わせてくれる人が限られているうちは、こんな調子でダル絡みしにくるのかもしれないよ。
数だけ吸って満足したのか駅の奥へと歩いていく。
別れ際に手ェ~をヒラヒラ。
携帯灰皿を取り出した。
「次からは有料」
蓋を開けてあなたのほうへ。
だいぶ吝嗇の気がある。そのうえ、他人には優しくない。
「嫌だったら自分で買うか他の奴にせびりな」
自分以外にもいくらかいるらしい、喫煙者。
「ン゛~……大人様の意見だぁ」
難しいね~とぼやきながら、短くなった吸い殻のやり場に困っていた。
灰は誤魔化し誤魔化し地面に捨てれてもこっちね。
最終的に灰皿出してとのアピールよろしく、あなたに吸い殻見せたりなんだり。
「じゃあまた吸わせてよん」
やめておいたほうがいいと思われようが、言語化されていない部分を汲み取ったりはしなかったらしい。
次、のおねだりがあります。
「味はそんなに……」
おいしいとかおいしくないとかじゃないんだよな……
「落ち着くためのルーティンというか」
落ち着かないバイトのせいで消費量が増えている。
「慣れれば違和感とかもないし」
なので、1本で満足してやめておいたほうがいい。
なんとなく吸い始めて、習慣化するころには依存してしまうから。
「ちょ~はぐらかされた気ィする!」
「自己責任の塊だからそこは安心してほしい」
吸い方が下手でどうしても強く吸いがち。
こっち側の煙草だけひときわ明るく光ってしまっていますよ。
よく燃え、短くなるのが早い。
「ねね」
「これ煙草好きからしたらちゃんと美味しいって感じるの?」
煙が口の中で転がる。初心者からしてみると味覚の点では一切理解し難い感覚だった。
「ン? あ~~」
「値上げとかしてるからね、昔よりね」
言い訳になってるか? 受け答えがいい加減。
「初めてでもなんでも自己責任で吸うなら文句はないけどさ」
相手が未成年である可能性は一切考慮していない。不良の溜まり場だ。
「初めてだけど?」
あんま吸わないどころか……。
この調子なら健康がどうとか説教しないだろと思ってべらべら喋る。
「ゴチで~す」
「最近ってェ、それだいぶ前から吸ってた人の発言じゃない?」
本当にハタチ~?と疑いも込めたじゃれつきが始まった。
20より下の数字だとは微塵も思っていない。
「なに、あんま吸わない人?」
せびってくるから慣れてるのかと思った。
親切ではないので、特にああしろこうしろとお節介は焼かない。見よう見まねで試すのも悪くない。
不良ってそういうもん。
「しっかり味わっとけ、最近は安くないんだから」
やっぱりケチ。
「柴さ~ん♪」
何はともあれ今は煙草タイムに夢中ですからね……。
柴犬って言わないよ、の意を込めた媚売り。
受け取ってるんるんとした態度のまま、覚束ない手つきで煙草を咥えて火をつけた。
ライターの使い方も初めて、くら~いの初心者。
「………」
「ン゛ン………ッ」
やっぱり吸い方さえも分かってないので、喉に引っかかったものを吐き出すように短く控えめに咳き込んだ。
「むず……!」
「えぇ……」「柴犬って言わないならいいけど」
渋い顔。まあまあケチ臭い男だった。
まあ1本くらいなら……
口約束に合意するならば、やっすいライターとメンソールの煙草を1本あなたへ寄越す。
あんまりタールの多くない軽めのもの。
お散歩気分でちょろっと出歩いているだけなので、
真面目に働いてるかは怪しかった。
呼び止められないなら、そのまま歩き去っていくのだろう。
「あ、ぬいぐるみ」
「これって拾って届けた方がいいのかなー」
「まあいっか。帰ろ」
そんな独り言が聞こえてきたかもね。
「柴!?柴犬みたい」
「だって適度にサボるくらいがいい~みたいなこと、昨日聞いたばっかだったんだもん」
屁理屈な上に第三者に責任を転嫁。不真面目ポイントが跳ね上がっていきます。
煙草は全然嫌がっておらず、火の点いた先が赤く明滅するのを眺める程には気に入ってもいた。
「……」
「一本ちょぉ~だい」
「柴」
特に嫌がっていなかったのでもう一本吸い始めた。
緑色の箱の煙草。
「用もないのに呼び止めてやるなよ」
「俺らと違って真面目に働いてンだろ」
「そうそう。真面目ちゃんとは真逆タ~イプ」
神経が太くおおらか。そして苦労も知らなそうにニタ~っとしていた。
「んで、名前は?」
「バイト仲間だし教えてよん。僕、八木ね」
「ン!」
「アイツ僕らンこと無視してますよ……!」
注:聞こえてないだけ。
瞬間湯沸かし器みたくプンスカかわいこぶったりなんだりをしだすので、ちょっと騒がしい。
「マ、いっか~~」
しかし見送りの姿勢。
なんにもない、ことはなかったんですね。
今日はたまたま、聞き逃しが多かっただけ。
なんかあるよ〜って言われたら、なになに〜って寄っていくような男なんですけど。
今日はなんだか、そういう日みたいです。
「もうちょっと回った方がいいのかなー」
「でも明日のご飯買えるだけのお金は残ってんだよねぇ」
なんて、独り言をしながら通り過ぎていきそう。
もう一度声を掛けたら、気が付くかもしれない。
勿論、見送っても構わない。気付かないまま生きていくだけだ。
「ふゥん」
鈍いほうなのかな。
それとも影響を受けにくいたちか。
「見られてる感じ、とかない?」
こっち見てくるだけの無害なやつは痛い目に含まれないか。
「お!あっちもバイト仲間っぽくない?」
「お~い、こっちになんかあるよ~」
人の声だ~。
なんかあるよ(大嘘)を餌にして呼びかける悪ノリが発生。
「ぼちぼちって」
メッセージだったら括弧笑がつきそうな感じの薄笑い。
躊躇が無さすぎて嘘を嘘と見抜くことはなかったそうです。
「痛い目見てないからど~してもね」
信じてないとまではいかないけどなんとも思わないスタンスは大正解。
懐中電灯片手に、ぷら、ぷら。
のんびーり、歩いている。
「うーん」
「何にもないとそれはそれで困るな〜……」
今日の稼ぎはなんと、0です。
「20」「ぼちぼちね」
一切躊躇のない嘘。法律守ってますのポーズ。
実際のところ、もう3年くらい吸ってるからこなれ感は出てるかも。
「幽霊とか信じてないんで……」
あんたもそうじゃないの? って。
ビビリはこういう場所で出くわした相手にのんきに話しかけたりしないだろ。偏見だけど。
「ほ~ん。ビビリじゃないタイプだ」
こわ~いとされる巡回エリアを休憩所に出来るってことは、つまりそういうことですよ。
「吸い慣れてんの?」
「20ちょいくらい?」
煙草吸ってるってことはさ!の勢いで年齢憶測をしておく。残念ながら外れているらしいけど。
「もう短くなってきたから……」
サボりかといわれると……
「煙草休憩」「人いないところで吸ってる」
サボりではなく正当な休憩時間で……(本人談)
「やめるン~?なんで?」
なんでって言われても。
煙草くせ~と言った口で、これなので、この「なんで?」にはダル絡み以上の意味は含まれていないっぽいよ。
「煙草休憩って奴だったりした?サボり中?」
「煙草くせ~」
「あれ?もしかしてこれって異変?」
呑気な調子で巡回中。
人間から煙たいの声も出てきます。
「なんだ、ただの喫煙者か……」
not報告案件。ヘラヘラしながら「おつで~す」と適当な挨拶をした。