コンコース(西)
改札内広場の西側。
有名コーヒーショップや小さめの本屋、土産屋などがある。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
ホームへの登り階段・エスカレーターもある
閉まっている店を思うと悲しくなるね。
営業終えた深夜の店の中に入ってみたい悪戯心とかがさ。
歩き回る。
時々立ち止まって、また歩くの繰り返し。
「……。」
トランシーバーに耳を当てる。
聞こえてくるのは砂嵐の雑音だけ。
トイカメラのシャッターを切る。
写ったのはぼやけた暗い世界だけ。
懐中電灯の明かりを点ける。
照らされた世界には何もいない。
「…………。」
何もない。
「いや~~~なんでデジカメ買っちゃったかなオレ……
だって、あったら撮っちゃうじゃないっすか~~~」
「デジカメが並んでるのを見たとき、やー、けっこうするな~、でもデジカメだしな~、つーか別に買わなくても仕事できるんすよねって思ってたんすけど……いやじっさいそうなんすけど」
「でもなんか、ほら、見えるじゃないっすか~~~~」
「アレなんすよ、なんか見えたのを、アレってなんだったのかな~……なんかヤバイもん写ってたのかな~、いやただの影っしょ……みたいなのって、頭の中で残るじゃないっすか」
「それならもう撮っちゃっえばいいんじゃねってことなんすよ。記録に残れば、頭の中に残らないみたいな……そういうのあるんすよ」
「だから、さっき撮ったあれだってただの足跡なんすよ」
「……ん? あれ……オレ、いつ自分なんて撮ったっけ……?」
【道具使用】
雨宮 さつき は 塩おにぎり を使った。
塩味が効いている。
「わっ!」
(座ってる人が沢山いる! こっちみてる!)
撮った場所を見ても誰もいない。
*はやく進もう、ここから離れよう!
(うん!)
小走りに歩いていった。
【道具使用】
雨宮 さつき は トイカメラ を使った。
カシャッ。……うまく撮れただろうか?
てくてく。お店がちょくちょくある。
(おひるとかなら、人がいっぱいいるのかなぁ)
人がいるのはこわいけど、静かなお店の中は多分楽しい物がいっぱいあるのだろう。
眺めながら歩いていく。
大きく息を吐く。しっかり休んで落ち着いてきた。
「行った方が良いな」
業務を後回しにしていい事はない。ボスの怒鳴り声が聞こえてきそうだった。
こうして逃げてきて、まだ残る業務時間の事を思い出す。此処で引き返したら、また業務時間が溜まる一方だ。
ズキズキ痛む頭が、早く帰りたいと言っている。
「……………」
息を切らしながら改札内に駆け込む。
ホームからの音は聞こえない。
肩を上下に揺らして、壁に凭れ掛かる。
「本当、何なんだよ………」
「本当に珍獣だと思ってるでしょ……」
生きてれば寝込む事もあるんですよね。多分。
「うーん、大した理由ないんですけどね……」
しょうがないなって話し出す。
本当に大した事じゃないんですけどね。
「ふーん」
「なんだと思ってる、とかじゃなくてさー」
「そういやなんでオカルト好きなのか知らないなあって」
「怖いから好きなの?」
何度も聞かれたかもしれませんけどね。
この男は知らない、し。それか、聞き逃しでもしたと思ってる。
だから、この機会にでも聞いてみた。
「そっかー」
「倒れるとこ想像できないのもそうなんだよね」
「怖い?」
「怖いんだ」
「間戸さんって、怖いとか思うんだ」
なんだか意外そうに、瞳がゆっくり瞬いた。
「その謎の自信はどこから来るの」
「そういう人ほどやらかすのがお約束って知ってるー?」
「怖いけど新説として魅力的ですね……」
アリかもしれません。
絶対有り得ないって事は、無いと思いますからね。
「それはそうなんですけど……」
「でも多分そんな事は起きませんので、
俺に限っては安心安全超健康優良アタリクジですよ」
「実は俺たちみんな間戸さんの見てる幻覚だったりしてね……」
何も見えない、聞こえない、感じないんじゃなくてさ。
ずっと見て、聞いて、感じてるのかも。
なんて、あちこち辻褄の合わない逆転の発想。
「間戸さんの場合、最悪突然ぶっ倒れたりしても
怪奇現象の仕業じゃないってわかりやすくていいね」
よくはないんだろうけど。
普通の介抱で済みますからね。多分。
「でも幻覚見てる人よりは元気だと思いますよ」
それはそうかも。
深夜に回っていると、
どうしてもお昼頃に起きる事になっちゃうのでね。
「なので俺は全然大丈夫なんですよねー」
「生きていくだけのカロリーは摂取してるつもりですよ」
そんな日もあるんです。
そんな日ばっかりかもしれませんけど。
そんな事もあります。
「まあ、人それぞれか〜」
よくわかんなかったけど、まあいっか、って当たり障りない感想で締めた。
「あー、おはよう? 確かに寝起きはそんなもんだけど」
「今日はお菓子だけのつもりなんだ」
「不健康だな〜〜」
まだ何個も溜め込んでるって知らないから、それで納得しちゃうんでしょうね。
そんな日もあるかーって。
「緊張してるのかもあんま分からないですね」
何にせよ避けているし、
人前で食べようとは思わないので。
これは確認の仕様がありませんね。
「今日はまだ起きたばっかりだし……」
「そもそも日に何度も食べる方じゃないって言うか……」
流石に持参はしてない。
そういうとこだけ聡いんですよね。
偏見の方は何一つ当たんない癖してね。
やんなっちゃいますね。
「えー? 緊張する〜みたいなこと?」
「俺にないのはわかってるでしょ」
あなたの前でも普通に食べたし、ご感想まで頂いた思い出。
「?」「うーん?」
「今日は食べてないってこと?」
手元の駅弁を見て。首を捻る。
持参してるってことですかね。
二週間分を?
物理的な薄さ、だけではないと思います。
やっぱりほら、これっていつかの感覚論と同じ。
「どうぞー」
あります。ここに。
「人前だとこう、上手く飲め込めなくなりませんか?」
「俺だけなんですかねー?」
「部屋で普通にお弁当食べてますよ」
「あとお菓子とか、配られるやつばっかりですけど」
色素は薄い方かもしれないですけど、それって生まれつきで。
自分のことあんまわかんないのもそうで、否定はし切れないんですよね。
「まあ、良いって言うなら有難く」
今すぐがっつくほど腹ペコなわけでもないんだけど、受け取っちゃいましょう。
駅弁が余るなんてことあるんですか……?
「人のは見るくせに自分は見られたくないって我儘だね〜」
「じゃあ普段何食べてんの?」
特に深い意図はない、ただの雑談です。
まー顔色は自分で見たって分からない、かも。
薄暗い照明もあるし。
全体的に薄い色をしてる、と思っているのもある。
「良いですよー、別に」
溜め込んでいるので……
傷む前に食べないといけなくて……
「普通に食べてますよ?」
「人前で食べるのはちょっと苦手でー」
えっ。
「もらっちゃっていいの?」
貰えるものは貰いますけど、
……、
「間戸さんが何か食べてるとこって見たことないかも」
「ちゃんと食べてる?」
あと3個ある、とかは知らないけど。
この男みたいに、外でも食べてる方が珍しいのかもしれないですけど。
「うそ〜……?」
ぺたぺた。頬を触ってみます。
うーん。自分じゃわからない……。
「周りが暗いからそう見えてるだけだったりしない?」
「これはオカルト判定じゃないかー」
そっかー。
「あー、あれってそんな感じなんですね」
「では……」
ゴソ……そっ……
これはね、この男が隠し貯めていた駅弁です。
あと3個あります。
「いつも顔色が若干悪いって言うか……」
見えてるかも。
「え?」
「…………」「……」
「いやここ電車通ってないし大丈夫だと思います!」
「多分」
「そんな死にかけてるように見えたの」
「全然そういうんじゃないって」
いやいや、と顔の前で片手を振る。
「ホームかー」
「来ないはずの時間に電車が来て、あれ?って思ったときには背中を、」
「ドン! とか」
「どう?」
何が?
「食べ物ねー、安いし買ってみたんだけど、栄養バー」
「食の楽しみがないなって思ってやめた」
「高いのはほら、手が出せなくってさぁ……」
「そのぼーっとしちゃうが、
酸欠状態で意識が朦朧とするの類義語でなければ良いんですが……」
感覚の比喩表現、なんですけどね。
見える人達の事は分からないので。
「はい、ホームの方に行けるようになったみたいで」
「ついでに食べ物も増えたりしてますよ」