コンコース(南)
改札内広場の南側。
主にホームへの登り階段・エスカレーターがあるが、コンビニもある。
閉まっているが。
「あ、お、お疲れ様です」
入れ違いになった者に会釈を寄越し。
「あはは……大丈夫です。まだ地図が頭に入り切ってなかったみたいで。歩き疲れちゃいました」
んなこたない。
コンコースは随分広い。
ぱたぱたと早足で来た道を戻る。
地図は頭に入れているつもりだが。もう一度、見直しておこうかな……。
人の声。巡回バイト仲間の気配。
「お疲れ様です……ぅわっ」
ひょこ、と顔を出した壁に。
グロテスクに開かれた口だか目だかわからん異形を見て、幾らか顔が引き攣った。
「おれ、むぎー!初めてのバイトしてるぞー!
よろしくな!」
自己紹介(全方位)
「あ、でももう寝る時間だ!戻らないと!
じゃーな!」
「貸し出しのものもあるみたいですけど、
貸し出しが書いてあるって事は書いてないものはそうじゃないんで」
「持ち帰れる……筈……!」
契約書はちょっと、そこは忘れたな。
他言無用は覚えてるんだけど。
「北郷さんですね」
ヤの人かな……とちょっと思って、黙った。
何か大きいから……
エンバさん、アッキーさん、北郷さん、洞木さん……
一人一人、顔を見ていって。
「呪いって分析出来たりしないかな……」
それはもはや呪いではない。
「皆さんよろしくお願いします!おっきい方も多いですね!力強そうです!」
ぺこっとお辞儀。
「成る程ーとらんしーばーを買うと色々聞こえるんですね…うーん」
カメラ買っちゃったんだよなぁ…と財布と今後に睨めっこ
「…………」
これ以上、見つかるものはなさそうだ。
深い溜め息を吐いて、腕をさすった。
「……はあ」
……人の気配がする。
そちらに、足を向けよう……。
トイカメラ片手。
報告すべき異常は山積してゆく。
地図にない道、あるはずの無い行列、レンズ越しにしか視えない人達。
黙々と、シャッターを切る。
深く考えてはいけない。これも、お金の為だ。
ふと、鏡に通り過ぎる影に注意を向けて。
反射的にカメラを向けた途端、暗がりに開く大口が眼前に。
「っ!?」
声にならない悲鳴。
力んだ拍子にトイカメラがチープなフラッシュを焚いた。
「…………」「……、……あれ」
何もない。
気の所為、だろうか……。
「……確かにここでけえな」
自分並みの相手とはなかなか出会わないものだから、
結構びっくりかも。
「北郷だ」
「ちょいとワケありでな」
「まあ、探し人ついでにこんな仕事を受けたって感じだ」
「変な駅に置かれてるものが呪われてない保証ってないよね」
「理に適ってるんだかなんなのか」
このバイトで使う分には、仕事道具と呼ぶに相応しいんだろう。
背丈は高い方である自覚はあったけど、こうも固まると感覚は鈍ってくる。此処だけ平均値高そう。
「どうも。僕はウヅカです。
巡回後、人がいる所に行きたくて」
「エンバさんこんばんはー」
「俺は間戸です、まどいって呼ばれてます」
ぺこ……
現在大変肩身の狭い男です。
「はい、応答しようと思ったんですけど切れちゃいました」
「おーお疲れ様です!
コンビーフ良いですね!調子の良い証です!
でもやっぱりぼちぼちの方は多いんですね〜。
アタシも今日はあんまりかもです」
懐中電灯をカチカチさせながら。
「あっアタシとしたことが!毎日自己紹介を忘れてました!エンバ ラブカって言います!なんかはじめて見る方多いですね!」
見渡しながら。
「いいな〜トランシーバーも買わなきゃ。悲鳴聞いてみたいな」
間戸さんへそう言ってから、
「僕は今日の巡回終わりだよ」
なんて答えただろう。