ホームE
ホームの一つ。
9・10番のりばがある。
カチ、カチ、カチ、カチ。
点けて、消して、点けて、消して。
チカ、チカ、チカ、チカ。
明滅する光は何も映し出さない。
一寸先は闇。
「もういいか」
これもね。
きっとあのとき置いていくべきだった。
そういうものの一つだった。
この手から滑り落ちていく。
物言わず墜ちていく。
最期、カシャンと小さく軽い断末魔をあげた。
【道具使用】
洞木蜜 は 懐中電灯 を使った。
懐中電灯は正常に点灯している
【道具使用】
躑躅森 むぎ は 業務用懐中電灯 を使った。
強力な光が点灯した
「お客様、しゅうてんです。」
「しゅうてんはどこかしら。」
「ここは終点だったのかしら。」
「ふふふ」
「ふふふ」
「ふふふふふふふふ」
「……はぁ、まったく最悪の気分ですよ」
今日の業務はおしまいとでも言うように、すっと立ち上がる。
そのまま、未だややおぼつかない足取りで宿舎の方へと歩いて行った。
「……誰か、いるんですか」
消え入るような声で、虚空に語り掛ける。
こんなにひどい頭痛、人生で初めてなんじゃないかっていうくらいで。
痛みはもう治まったはずなのに、余韻のようなものがずっとこびり付いていた。
いつもと変わらぬ業務。いつものように巡回して。
「…………」
__不意に、ひどい頭痛と眩暈に襲われる。
思わず、その場に膝をつき。
ホームを眺めながら、
静かなベンチに座り込んでいました。
当然誰かと喋る訳もなく、
幻覚幻聴幽霊UMAその他怪奇なんかは
この男に微塵も分からないので。
電車が来るであろう、
暗い穴蔵を見つめてる。
頼むから、見ないでくれよ
そういったところで、変わりやしない
「ははっ……、怪異化、だって?」
「ふざけんなよ」
「冗談じゃねぇ」
自分も、アイツも、他のやつも
言ったんだ
『帰る』って
「なら、俺がこんなとこで……
へこたれるかよ」
空元気はまだ尽きない
そうして、程々にこの場から去っていくのだろう
人に散々、健康面のことを言ってきたくせに
いざとなっちゃ、自分がマトモにできやしない
今、俺の目の間にいるのは『何だ』
「……クソが」
前までは少し気をつければ、なんてこと無かった
……なんてことはなかったのに
「深呼吸、しろ
大丈夫、大丈夫……、だから」
「とにかく」<s1>「息をして」</s1>
言い聞かせて、演じて
騙って、思い込ませて
【道具使用】
ラハティ は お菓子 を使った。
おいしいお菓子だ
「……。」
音声案内が流れている。
「あなた」行きの電車がやってくる、と。
そんなものが走っているわけがないので、
ああ、これはきっと異常かなにかなのだと
線の内側で立ち止まったまま聞いている。
音声案内が、繰り返し、流れている。
事例の報告、一々書くのが面倒なんだよな。
そんなことを考えながら、
ただぼんやりと電車を待っている。
「……。」
不意に一歩、線の外側に踏み出した。
右に、左に、と顔を向ける。
「……なんだよ」
「来ねーじゃん」
……舌打ちを一つ零して、踵を返す。
ぼんやりしてないで巡回業務を、続けないと。
声をかけてもらって、持ち直して。
取り囲むように眺めてくる目玉たちに
怯えながらも、眠りについて。
ああ、いやだいやだ、そんなことを思いながらの巡回業務。
全部目を逸らして何でもないフリをするには……苦しくて。
「電車……」
10番乗り場のホーム、白線の内側で
まるで電車を待つかのように立ち止まる。
チカチカ明滅する懐中電灯が白線の外側を照らしている。
「……来ねえかな」
ただぼんやりと、照らされてる先を眺めている。
何か逃してくれるものでも来ないかな、なんて。
【道具使用】
千代 は デジタルカメラ を使った。
ぴぴ、ぱしゃ。……うまく撮れただろうか
【道具使用】
帳 夢斗 は 駅弁 を使った。
駅弁を食べた。おいしい
──……目元を払うような仕草。
「帰ろ」
こういうとき背が高くてよかった〜って思います。
懐中電灯だけ先にポイと投げて、よっ、とホームへよじ登る。
なんせ足が長いもんで、そんなにみっともない姿は見せずに済んだんじゃないですかね。
見る限り誰もいないんですけど、ほら、皆して視線がどうとか言うでしょ。
自分が見たことないからって、他人の幻覚なのか自分が見逃してるだけか、ちょーっと判別つかなくって。
「あれ〜」「あー、あったあった」
適当に投げたせいでコロコロ壁の方まで転がってっちゃったみたいでした。
ここで見失ったらなんのために降りたのって話なので見つかってよかったよかった。
じゃ、暗闇歩いて帰りましょ。
「……っと、」
迷ったけれど、線路に降りることにした。
懐中電灯を拾い上げて。付きっぱなしの明かりを線路の先に向けて。
暫く、そんなふうに佇んでいた。
「っ、あ」
ぼうっと考え事をしていたら、懐中電灯がするりと手から抜け落ちて。
カツン、と一度ホームの床に跳ねてから、線路の方へ落ちていった。
「……」
「あ〜……」
黄色い線の外側で、しゃがんで線路を照らしている。
「■■■■行き、ねぇ」
「四文字って幅広くて困るなー」
暗証番号とか、パスワードなんかと同じで。
長くて複雑なほど、当てる側は骨が折れますからね。
【道具使用】
異崎眞 は お菓子 を使った。
おいしいお菓子だ
「はーい、俺は大丈夫なので
心配無用ですー」
「異崎さんも無理しないでくださいねー」
という訳で探しに行ってきます。
行って戻るか分からないから、
行ってきますではないですね。