ホームA
ホームの一つ。
1・2番のりばがある。
「問題の準備して、話題の整合性考えて、って……」
「俺塾講師と違うんすから、上手く出来る訳ない」
こうして独り言ぶつくさやるのも、
考え事のし過ぎなのかも知れないな。
「まあでも、結構……」
「悪くない感じはしたかな」
「あ~~、なんか……俺がマトモに巡回すんのって久々な気ぃする」
「頭脳労働なんかやるもんじゃないすね」
「不眠症悪化した気すらする」
トランシーバーから聞こえる音に耳を傾けている。
口に近づけたら、誰かに聞こえるだろうか。
はくはく、と口を動かしてみた。
話すとしたら何を話してみようか。
「…」
トランシーバーをしまった。
ホームに腰かけて、眺めている。
来ない電車を待っている。
【道具使用】
真白こころ は 簡易トランシーバー を使った。
ざざ、ざざ……
重くなった足に首をかしげる。
雑音しかなかったトランシーバーから、助けてと言う自分の声がした。
「…」
ため息吐いた。
言えるわけない。
誰も助けてくれなかったから。
ホームの上。
腰下ろして足をホームから投げ出してぷーらぷら。
来るはずのない電車を待つようにきょろきょろ。
鼻歌交じりで駅弁を食べている。
「……あなたはだれですか?」
……
「……またまちゃんは、きてくれますか」
……
「……わたしは、どうしたら、良い子になれますか?」
……
歩き出してる。見えない何かと、話しながら
「ヒユッ」
気付けば触覚は戻ってた。あと、意識も
「……こうなるのは、こわいですね……」
戻る、もどる、巡回に
「役に、たたなきゃ……」
じゅんかいを、してた
してただけだった
いつもみたいに いつもみたいに
「こないで、こないで……!」
皮膚を引っ掻く。痛い。止まらない。止められない。
入り込んでくる
「やだ、どうしよう、やだ……!」
光すらも入り込んで来そうで、懐中電灯下に向けて。
ホームの柱にもたれてる。
「たすけてまたまちゃん……」
大丈夫。これからも友達だから。
大丈夫。私はまだ正気だよ。
どこにいてもずっと寒くて。もう亡くなった顔が手招きしてても。
「サンクスチュンちゃん!やさし~ねぇ」
「チュンちゃんってさ、どんな香りが好きなん?」
抱き着いていた姿勢から腕を組む姿勢に変えて。
二人仲良く巡回へと舞い戻ろう。
「こっちこそだよ。」
こういうのって初めてだから、嬉しくて
友達でいるつもり、満々だった
居てくれたらありがたいな、って思ってる
「いいよ、一緒にまわろう。
私ももう少しまわらなきゃって思ってたところだし。」
サクッとまわっちゃおう
二人なら倍速で終わっちゃうだろうから
ゆたんぽになりながら、巡廻を続けに行くことになるだろう
「やった~!楽しみがまた増えちゃった!」
勿論、このバイトが無事に終わってから。
これからもきっと友人で居てくれるはずだという期待も込めて。
「そ!アタシはこれから。
サクっと回るし、もしチュンちゃんが良ければ一緒に行く?」
先に戻るなら宿舎のラウンジで待っていて欲しいと伝えよう。
「喜んで。着てみたいのあったら着せてあげるよ。」
香水を選んでくれるお返しみたいなもの
着せるものを持ってきていないから、終わった後になるけれど
「うん、じゃあ、お邪魔するね。
見回りはまだこれから?」
後で行った方が良いのか、今からか、どちらだろうとお伺い
「他にもいるとしても、アタシから見ればハイパービューティなチュンちゃんだし~」
「そなんだ!じゃあいつか着付けしてもらおっかな」
肉体的にも精神的にもタフになりそう…。
「いいよ!!じゃあ戻ったらそのままアタシの部屋に一緒にいこっか」
「そっちの方が早いしね」
つけ方も教えたげるし、と。
「私より似合う人はいっぱい居るよ。結び方は色々あるね。
格式高いのとか、可愛いのとか。
アキナちゃんは可愛いのが似合いそう。」
十二単は最早修行かもしれない
20㎏の重しを付けて歩き回るという
「へぇ、ホントにいっぱいある…いいなぁ。
え、じゃあ、アルバイトの間だけ…借りても良い?
選ぶのはアキナちゃんにお任せで。」
ここにいる間は料理はしないし、良いかなと
何より、気が紛れるかもしれないから
「へ~。着物似合う人って美人さん多いよね!
チュンちゃんがキレイなのも納得ってカンジ」
「帯の結び方も色々あるんだっけ」
ただのバイトに十二単は苦行オブ苦行ですね。
何かあっても逃げられないし。
「モチよ、今日の気分はコレ!ってカンジでつけてから仕事行くんだー」
「桃とかライチとか~…とりあえず色々持ってるよ。
プチプラなら数千円くらいで買えるものもあるし」
「ブランドものだと何万もするけどね~」
いくつか貸せるよ、なんてニッコニコ。
「晴れ着とかで凝るなら兎も角
普段着くらいなら全部一緒だから。
ややこしいのは帯巻く時くらいじゃないかな。」
十二単はちょっと、着てたら巡廻どころじゃないな
確かにあれはとてつもなく重い服だけれども
今の着物は軽いものも多いので安心されたい
「気づくよ、この距離だし。これ、ラズベリーなんだ。
じゃあ幾つか持ってるんだね。明日も変わるのかな。」
お洋服みたいに気分でつけちゃうの、楽しそうだな
「カイロ直貼りだと…えっとなんだっけ?低温ヤケドになるんだっけ」
「ひぇ~、簡単ってマ??めちゃムズいイメージあるんですけど」
重たいイメージがあるのは十二単を思い浮かべてるからですね。
「あ、さっすがチュンちゃ~ん!わかってくれる!」
「今回はラズベリー系で~す♪」
むぎゅむぎゅしながら小さなピースサイン。
「お気にをいつも使ってたらすぐなくなっちゃうからさ、色んなのをローテしてんの」
「まだ一週間あったんだ…
うんうん、心を保てるものがあるって良い事だもんね。
本当にここ、色んな事ありすぎてどうなってるんだか。」
ちら、ちら、と周囲に目をやったり
ここにいる二人以外の視線やら何やら、常に感じてしまうものだから
「そう、カイロ。
袷に入れたり、帯に挟んだりしてね。
着物の着付けは慣れたら簡単だよ。」
今時なら色んな着方があるしね
とはいえ洋服より手間なのは確かかも
「アキナちゃん、香水変えた?」
いちごじゃない香りになってる
ベリー系には違いないけど、また少し異なる香りには気づいた
推しか好きピの写真なのかな~?なんて勝手に想像したりするが
流石につつくような無粋な真似はしない。
そもそも初対面だしね。
「そーそー。イイことある方がレアだろうし~、ここなら特にね」
今回はラズベリー系の香水を纏っている。
いちごの香水とはまた違った甘酸っぱさかも。
「カイロ…!そなんだ?
思えばチュンちゃんいっつも着物じゃんね」
「自分で着付けできるのスゴ」
朝いちの様子を見られれば、きっと可愛いと悶えているに違いない。
「ん、うん、そっか。
良い事あるの、良かったね。」
深くは聞かないけれど
良い事あったんだなくらいは
こんな場所だから、良い事だと思っているし、大事にして欲しいなって
今日もふわふわ、小鳥のよう
むぎゅ、とハグされている
「得意じゃないからカイロ仕込んだりしてるよ。
着物って着こむ癖に暖かさは微妙だから。」
朝一とかだと体が温まり切ってなくて
膨らんだスズメの如く縮んだりしている、実は