ホームB
ホームの一つ。
3・4番のりばがある。
「とおっ!」
ホームに飛び降りてみました。
「わあー! 夢だったんですよねー!」
本来危ないところに、
足を踏み入れちゃいけないところに、
入ってみるの。
「まどいさん、ね。よろしく」
「っ、……電車ね、気をつけます」
「まどいさんも気をつけてー。変なのについてったら駄目ですからね!」
今日一日で電車に対して心証が悪くなってしまった……
付け足された単語にびくっと過剰反応しながら。
見回りのルートに戻っていくだろう。
「安心してくださいね!」
そう、興味はある。
安全が担保されてるなら試したいくらいには。
そうじゃないから悩んじゃいますね。
「俺は間戸って言います」
「まどいって呼ばれてますー」
「お仕事戻るなら気をつけてくださいね」
「電車」
「ああよかった……」
「まあ、気にはなりますよね。うん……」
死にたいわけじゃない、と聞いてほっとした顔。
気になるのは、得体の知れないものを見ればそんなものだろうと。自分も全く気にならないと言えば嘘になる。
「……さて、俺はそろそろ見回りに戻るっす」
「あ、名前聞いてもいいすか? 俺、暮沢っていいます」
同じバイトだからすでに紹介もあったかも知れないけど、改めて。
場所が異常、なんですよね。うん。多分。
その方が優しいと思うし。
じゃあ、それで良いなって思います。
「…………」「大丈夫ですよー!」
「乗って死んじゃったら元も子もないですからね」
「気にはなりますけどね」
「死にたい訳じゃないので……」
確かに、幻覚よりは幽霊のほうがマシかも知れない。
自分が変になっているわけではない。この場所がおかしいのだ。
「乗りたいんだ……」
「やめといたほうがいいすよ!
乗ったら碌なことにならないって。見たことない行き先書いてあったし」
「……」
「もし、もし見えたとしても、乗らないでくださいよ……!」
なんとなく危ない雰囲気を感じたので、念を押した。
そうでなきゃ幻覚かな、と思いますけど。
幻覚よりは幽霊の方が、まだ良いかなって。
そう思っています。
「そんな事無いですよ?」
「それでお陀仏なんて演技でも無いですからね」
「俺が乗っても良いんなら、
個人的にちょっと乗りたいとは思ってますけど……」
「えー、そっか……俺も霊感なんてないと思ってるんだけどなあ。
やっぱ幽霊なのか……」
はっきりとはしないものの、確かに電車が写っているのに。
でも、あなたが嘘を言っていそうには見えないし、色々と不気味なことが起きているこの状況。
電車の幽霊なんていう存在も、簡単に受け入れてしまう。
「全員乗れそうですねって、なんかちょっと楽しんでません?」
「お迎えだったらここの皆全員乗れそうですね」
それはちょっと怖くて贅沢かもしれませんね。
見せてもらえるなら寄ってきて
写真を覗き込んだ。
古めの、薄暗いホーム。
「うーん、何も見えないですね……」
「俺霊感無いみたいなので、
やっぱり幽霊なんじゃないですか? 電車の」
「え?マジで? 電車の幽霊?」
「俺にしか見えてないのかな。お迎えの列車だったらどうしよう……」
今来たところ……というわけでもなさそうだ。
電車の幽霊と聞いて妄想を膨らませている。
「あ、写真も撮ったんだった。最後に来てたやつ……」
トイカメラを取り出す。興味があれば写真を見せるだろう。
まるでこちらを見ているかのように、ヘッドライトが怪しく光る電車が写っている……はずだ。
何度か見渡してみても、
特にこの男の目に電車は見えない。
と言うか、こんな所に電車が走ってるとは思えない。
「そうなんですか?」
「俺には全然、見えなかったです」
「電車の幽霊? なんですかね」
「……あ、どもー」
声の方を見たらバイト仲間がいた。ほっとした顔。
「電車。さっきからめちゃ来ますよね」
「アナウンスとかなしに入ってくる電車もいたんで、マジ怖いっす……」
さっきから3本も電車を見送っている。
「……ちょっと、さっきから電車すげー来るじゃん!」
「終電遅すぎだろ、どこ行きだかよくわかんねーし……」
見回りしながらキレている。怖いので。
「しかし、ガスかー」
うーん。
ちょっとだけ鼻をすんすんとひくつかせてみるけれど、
案の定何の匂いも無いんですよね。
古っぽい、埃やカビの香りはするんですけど。
>>8570 百万……? 妙だな……。
とは思いつつ、言う前にあなたは行ってしまうんでしょう。
「ありがとうございます」
そういう病気。その発想も良いですね。
実際そう思った方が健全だ。
「はい、勿論です」
「頑張ってくださいねー」
手を振るのに合わせて、こちらも手をふりふり。
>>8560
「ダイジョブダイジョブ!」
「だって百万もらえるんだもん、
お菓子一個でケチケチしねーよ!」
「バ友がラリるのイヤだしな~」
そういう認識らしい。
ラリったり様子がおかしくなったりする。
でも自分はお菓子をたくさん食べれば治るから、これはそういう病気みたいなものなのだ。
「んじゃあたしもっとあっちのほう行くから~」
「マドも気をつけろよ!」
手をひらひら振って、さらに奥へと。
>>8554 「はい、世の中には再現性の無い
不可思議な事が沢山ありますから」
そういうのと同程度に考えてます。
オカルトなんて、そんなものでしょう。
「偉いですねー」
拍手しちゃうね。
「うん、教えてくれてありがとうございます」
「そんな大事なものを俺に寄越して良いんですか?」
食べる時が来ませんからね。
無駄になっちゃうかも、なんですよね。
>>8551
「なんも無いなら良いけどよー。
ここたまにワーッて変なモン見えるから、
そゆときはお菓子とかいっぱい食べると治るんだぞ!」
「マドはいいやつだからタダで教えてやる! 覚えておきな!」
えっへん。
「これやるよ!」
と、あなたにスナック菓子の袋をひとつ押し付けようとする。
>>8551
「ありがとー。おまえイイやつ!」
渡されればグシグシと口周りを拭った。
「レーカンってユーレイわかるチカラってこと?
おまえ頭よさそーなのにヒカガクテキなこと信じてるんだな~」
そのへんにポイッ……とティッシュを捨てかけて。
拾ってホームにあるであろうゴミ箱に入れた。
「良いことしたッ!! 今日はラッキー!!!」
ヒカガクテキ。
▼