商業通路(西)
改札外西側。
主にチェーン店やレストラン・カフェなどが多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「えっ、カップルじゃねーの?」
「なんか抱き締められてるし頭撫でられてるからてっきりイチャついてんのかと」
初対面でそれとは一体どういう状況?と首を傾げ
「あら。」
不意に漂った腐敗臭に視線をどこかに向けた。
視線を巡らすと、窓に垂れ下がった髪の毛のようなモノに留まった。
「外に誰かぶら下がっているのかしら。」
「け、契約書はちゃんと読まないと……」
読んだ上で来ているのも大概か。
でもなあ。時給1万円だから、で納得しちゃって……。
「カメラ、撮れたものは沢山あるんですけど」
「懐中電灯のほうが安心感は、ありますよね……」
「当然知っててきたっすね」
「変なバイトって好きっすからね〜」
「……」
「カメラより電灯振り回した方がいいっすねこれ」
何にも映らない。
「今夜は随分アナウンスが流れたな。普通にびっくりしたわ」
繰り返された『ごきげんよう』のアナウンス。話者の名前は聞き取れなかったが。
「それは……まあ、はい。犯罪の片棒だったら、逃げるつもりだったんです……」
しょも。ほんまか??
真面目にそう思うあたり、そもそもこんな怪しいバイトへの適性がないのは明らかだ。
「えー、俺の他にも顔見たやついるのか。じゃあ見間違いってことにできなさそー」
「まじで幽霊でも住んでんのかな、ここ……」
壁から手、の話も漏れ聞いて。
「あ、じゃあ仲良しに……?」
能天気男かも。
「ヤバいやつ、て言うか」
「え?」
「それを知っていて来たんじゃないんですか?」
捕まっちゃった!
じゃあ力を入れすぎない程度にハグしてゆっくり頭を撫でますね。
「よーしよし、怖かったなあ~
でもオレがいるからもう安心だな ホレホレ、大丈夫だから落ち着きな、な。」
落ち着いてないのはこいつのハグのせいのような気がするが。
「時給1万だろ? めっちゃ高いのが魅力でこのバイト応募したんだがな~
こーれ、もしかしてなんかヤバい奴だった?」
尻が軽ければ頭も軽い。
こんな調子で生きてるのだ。この男は。
「大きい顔は昨日見t…ひゃい!?」
まさか大の男が抱きしめて来るとは思わないので
捕まってしまうのだった、憐れ
勿論びっくりして固まるし、あわあわしている
髪はふわふわ、リボンが盛大に揺れたかも