商業通路(西)
改札外西側。
主にチェーン店やレストラン・カフェなどが多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「うわぁっ!何だあれ!?」
窓の外に見えた巨大な顔。情けない悲鳴とともに飛び退いて走る。
十分に離れた場所で振り返った。
「見間違い……だといいなあ」
「あ、すずめさんもお疲れ様ですー」
「そっか、駅だから電車ごっこなんですね」
「俺すっかり忘れてました」
ここが駅って事……
それよりずっとオカルトなので……
「もう道具が揃ってきてる人がいる。
カフェオレとか、おにぎりとか、買ってみたんですけど。あんまり味わってる余裕ないかもです。
そういうの買ってなかったらカメラとか買えたんでしょうか」
「駅ですし走らせたいですよね、電車」
「単純にこんだけ暗いっすから、誰かと一緒なら安全確認しながらでもあるけるっすしね」
「見えない何かより見えない段差で怪我する方が怖いっす」
「お疲れ様です……」
食べ歩きだ……。
「女の子限定なんですね……?」
「電車ごっこ。懐かしいな……確かに、怖さは無くなるかもしれません」
人の足を踏みそうだけど。
「2人1組、ですか。確かに、良さそうですね……」
「これだけ人数が居れば効率も落ちないとは、思うんですけれど……」
うっかり逸れた時に余計に恐怖心に駆られそう、という不安は置いておいて。
「なんすか〜?今の時間帯の業務はそんなに怪奇現象起こりまくってんすかね」
「だからより固まってらわけっすか」
「2人でも3人でも」
「もっと大勢で電車ごっこでもしながら見回りでもいいかもしれませんね」
「お、2人一組? いいこと言うじゃ~ん!
俺と組みたい女の子はぜひ俺のとこに来てよ。
一緒に巡回しようよ〜 ね!」
無視していいやつです。
「こうなると2人1組で回るっていうの、
結構アリな話なんじゃないかなって思いますよね」
「何だか道中も大変そうだし」
「1人より2人の方がマシでしょうし」
視線って何でしょうね。
天井を見上げて、首を戻して。
「あ、す、すいません。走ってきて……」
大丈夫です、と手を横に振り、お疲れ様です、とまた会釈を寄越した。
握り締めっぱなしのトイカメラに視線を落とす。
レンズ。黒目と目が合った。
「……」
瞬きの間に消え失せる。
矢張り、気でも狂ったのだろうか……。
【道具使用】
猫屋敷 珠緒 は 焼き鳥 を使った。
やわらかく、タレがしっかりしている
「業務で怖くなって、逃げ出したら、気付いたら人の集まりになってただけで」
特に何かがあったわけではない。
人が多い方が安心出来る。多分そういう心理か何かかも。
「へぇ。じゃあ視線を感じる人とそうじゃない人、両方がいるというわけですか」
「かくいうわたしも、視線はちょっとわからないのですが」
新しくやってきた者には「お疲れ様です」と声をかけ。
「は、はい……へいき……平気です」
「な、何かありましたか?大丈夫かな……」
蹲っている人が居る。一瞬別のものと見間違えてびくついたが。あれはどうやらバイト仲間らしい……。
冷や汗を拭う。あとでシャワーを浴びないと。
人々の後ろにも、床にも、天井にも。目があること。
突き刺さる視線は、取り敢えず無視した。
「よーしよーし」
「大丈夫ですよー」
男だから見苦しいとか、女だから可愛いとか。
そういうの特に無かった。
「うん、皆良く視線が気になるとか」
「天井を気にしたりしてるみたいですよねー」
「俺にはさっぱり分からないんですが……」
「……っ」
このあたりは、どうも人が多いみたい。
通路の一角から飛び出してきた女は、一瞬顔を引き攣らせて、それから人影達が正常な人間であることに安堵した。
「はあ……ふぅ……」
「お、お疲れ、さまです……」
深呼吸。