商業通路(西)
改札外西側。
主にチェーン店やレストラン・カフェなどが多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「えきべん、また食べたいですわ。宿舎に売ってますでしょうか。見るついでに戻ろうかしら。」
「ふふ、これですと人間百鬼夜行ですわ。」
「ならお揃いだ」
ジャパニーズ・ヒューマンのジャパニーズ・それなり。
「みんなでついてって見ますかね?」
「後ろを…そろりそろりと」
「美味い!! 君もどうだ!!」
「……気配があったと思ったんだがな!! 誰もいないか!!」
ガツガツガツ。駅弁を食らっている。
「こういうのがある、と事前にご説明があれば良かったのですけど、ちょっと不親切ですわ。ばいとはそういうものなのでしょうけど。」
普通。果たして彼女は普通なのか。
「私は少し遭遇しましたけれど、もともとこういうのは…好きですので人それぞれ向いている向いていないがあると思いますわ。」
「信心あるんすね」
そりゃそうだろ。
「慣れちゃったら戻れなくなるかもっすよ?」
「ずっと騒いでられた方がいいに決まってるかもしれないですね」
「わからないですけどね。お気をつけて…」
「…」
フラフラしたまま帰るのに。
ありゃ大丈夫っすかねと頭かいた。
【道具使用】
小田巻権三郎 は 駅弁 を使った。
駅弁を食べた。おいしい
呟きを途中まで落とした女は、ふらふらと広場への道を辿っていった。
青い顔のまま。戻ります、すいません、と呆然とした言葉だけを落として。
「い、いえ。此処まで来れば、なんとか……」
なんとかなる筈だ。地図にない道にさえ、迷い込まぬ限りは。
「慣れる。慣れる、んでしょうか」
この恐ろしい視線に?退路を断たれる恐怖に?
それは、それは……気を違えてしまったひとと、何が違うのだろう。
「皆さん、大なり小なり、何かを見て、らっしゃいますもんね」
私だけではない。無いはずなのに。
どうして誰も、あのまなこに気が付かないのだろう。
「普通……は、難しい、ですね」
こんな状況では。
不明瞭なつぶや
「やっぱり祠を壊すしかないんじゃないっすか?意地悪な神のいる…」
おそらくここに祠はない。
溢しながらも水を補給するのを確認しながら。
「僕はそんな感じになるようなことには遭遇してないっすね」
そこまでではないと口にする。
介抱は他人がやってるからノータッチで。
それはそれとして羨ま……可哀想です。
「はい、俺今のとこ全然でー」
「出会うのと出会わないの、どっちが“普通”なんでしょうね」
「お化けとかそれに近しいものなら、あるけど…
貴方が見たものと同じかは、分からないわ。」
それほどに動揺するもの
何を見たか分からないけれど
普通じゃ見ないものは、幾らか
「お戻りになるのでしたら、どなたかに同行をお願いしては?また道に迷ってしまっては大変ですわよ。」
「いずれ続ければ慣れてくるでしょうし、会う可能性も出てきますでしょうし。」
のんきにふんわりと話している。
「そ、うですね……」
正常じゃない。心底、その通りだと思った。
視線が拭えない。暗がりから投げられる気配に肌が粟立つ。
気でも狂ったのだろうか。
或いは、狂っているのはこの駅か。
震える手でミネラルウォーターを引っ張り出し、悪戦苦闘して蓋を開けた。……が、殆ど喉を通らない。
溢してしまうのが関の山だった。
「あまり、遭遇されていませんか?その。こういうこと……」
「もってるんなら飲んだ方がいい」
「若しくは頭にかけるとか」
「それだけでも冷静になれるものですよ」
「今、あなたは正常じゃないんすから」
動揺っぷりは平常心のそれではないから。
客観的に見た感想を呟いた。