商業通路(西)
改札外西側。
主にチェーン店やレストラン・カフェなどが多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「どもっす。まぁ今の所は。」
ちょっとした現象に苛まれてはいるが。
「お化け屋敷はフィクションだからすからねぇ。」
多分皆理解していることを口にする。
「オレ計算は得意すよ。答えがわかるから。数学は苦手すけどね。数学は成績2だったんで。」
なんと事実である。
「難問に立ち向かえる程の気力は無いんで。だからアンタ達の考え方はタメになる気がするんすよ。」
否定をする気は無いらしい。
「それもございましょうね。」
妬ましいだなんて。わかり合えないんだなんて。
…ため息吐いた。
「おばけやしきはやるのに、本物はちょっと、ですか。」
すっとんきょう。
ズレずれの言葉を吐く。
「そういうものだと思ってしまえば幾分楽でしょう。永遠に結論が出ないことだって、解決しないことだってありますもの。」
「幽霊に岩塩とか投げてみたらどうなるんすかね、砕く前のやつ」
礫。
「答えがないものを問い続けるのって集中力いるじゃないですか」
「それよりはわかりやすくてゴールが見えてるもんの方が楽っすからね〜」
「お昨日のナンパマンじゃないっすか」
「今日の巡回は…これからっすね」
そういえばずっと喋っていたな。
「見えはしないっすね。すんません、そう言う意味を込めて言った訳じゃあないんすよ…。」
申し訳なさそうに目を伏せている。
「なんというか。オレは幽霊のこと恐怖や死を招く者だと思っているんで。」
人間にとって対照的な存在だと認識しているらしい。
「興味を持っているみたいな考えはオレにはできなかったな、と。」
「やっぱ純粋な塩がイチバンかぁ〜。」
ヘラヘラとしている。
「哲学みたいに答えが無いものを問い続けるのが苦手で。ま、気が狂いそうにもなりますけどね。」
「ポテトチップスの塩はちょっとアブラギッシュっすね」
「揚げ油は幽霊は嫌うかもしれないです」
「オカルトもホラーも考える分には嫌いじゃないっすけどね」
「こんな場所っすよ。気が滅入りそうになるならやめておくが吉っすからね」
「人間に対して興味ではないんじゃないんすかね。怪奇現象ならともかく幽霊は」
「興味じゃなくて、羨望」
「生きてる頃の振り返りと今ある姿が羨ましくて妬ましいんでしょうや」
「幽霊のことはそこまで嫌いじゃないっすけどね。話はできないと思うっすよ」
「過去の人間と今の人間は分かり合えるはずないっすから」
「ご安心ください。私、まだ足は掴まれていませんので…いえ、同情してしまっているから掴まれないのでしょうか?」
これはいいな~のノリ。
「…異常者に見えますか?」
だって羨ましいって言ったから。
…にこやかに笑っているのはさすがに。
「いろいろ考えても仕方はないでしょうね。だからこそ報告をする、それがばいとですもの。異常があれば報告する、その後どうするかはあちら方におまかせとなりますでしょう。」
「や、それは申し訳ないと思うっすよ。」
オレは生にしがみついている者だから…。
「アンタみたいに平気で……幽霊のことを信じられるのが羨ましい限りっすよ。」
こんな所にいてなんだがホラーは苦手なもんで。と付け加えて。
「ポテトチップスについてる塩とか……効果があったら今こんな目には遭っていないか。」
「科学じゃわかんないことを、あんま考えるのはよした方がいいっすね。」
気が狂いそうになってしまう。今はそれはそれ、これはこれ精神の方が楽になる
「同情して引き寄せて足持ってかれてもしらねっすよ」
「立ち去らないのは…」「…」
「停滞起こしてるからじゃないっすかね〜。生が終わったことが受け入れられないとか」
「さち去らない、じゃなく立ち去れない、のかも」
「駅に縛られてたりとか。地縛霊ってやつとか」
指折り可能性を並べながら。
「食卓塩でもいいから持ってこればよかったすね」
「あら。つれないお方たちですわね。」
ねー。
何もないところに向けている。
「きっと人間に対して興味をお持ちでしょうに。私たちがオカルト的事象を見つけるように、幽霊さんもまたどんなものなのかを見ているだけなのかもしれませんよ。」
「お話出来たら、少しはわかり合えることでしょうに。残念ですわ。」
「そう考えると哀しい……いや、幽霊に同情すんのは余り良くないっすよね。」
幽霊に対して優しさは無いほうがいいかもしれない……。
「うーん、何で立ち去らないんすかねぇ。やっぱり一人でも多く殺さないといけないのかな。」
自分で言っててバトルロワイヤルみたいだな、と感じた。
「清めた塩、持ってくればよかった〜。」
「何もしない、言わないなら立ち去ってほしいっすね。幽霊なんだから」
「警察すら揉み消せるのかも、怪奇現象なんすから」
「冗談すけどね。警察来るような事態にはここもしたくないでしょう」
「大丈夫、わかります。俗っぽい方が生への執着あるってことになるじゃないっすか」
「幽霊は生きてないんだから生への執着がない」
「未来もなくて明日もないんですよ」
「死んだ日に止まり続けるだけっすね」
「まぁ前も言ったけれど、死亡者が出たら警察案件になるっすからね〜。」
精神崩壊はなるかもしれない。
「俗っぽい方がいいんじゃないっすかね?なんか欲望を思っているといい、みたいな。日本語おかしいや。」
頭を掻く。
「金とか食物とか、幽霊には欲望……生きるエネルギーが無いってよく聞くっすから。」
「おれも毛を落としがちだけど、こーいうの、溜まったら詰まるからよくないんだよな。…んー、割り箸?とかないかなぁ。」
駅弁についているものを使ったらいいかもしれないが、そうしたら駅弁を食べれなくなるな…
「ご覧になりました?お土産屋さんに列が出来ていたのよ。何が売っているのか気になりますわね。」
誰に向かって言っているのだろうか。
…どこを見て話しているのだろう。
「ふふふ、何時食べても、えきべんは美味しいですわ~」
駅弁を食べている。
…彼女を見る視線は減っていたような気がした。
「……」
ちょっとさびしいな。