ホームC
ホームの一つ。
5・6番のりばがある。
「変われたら苦労もないだろうしねぇ…」
何やかんや真面目な性格も死ぬまで治りそうになく
もう生まれ持った気質的な感じで受け入れるしかないかも
「どうでしょうねえ。性格なんて、そう簡単に変えられるモンでもないと思いますが。」
はあ、と溜息をひとつついて、適当な柱だとか壁だとかに背もたれて。
煙草の箱をポケットから取り出す。
「現にアタシは昔からずっとこのままだ。
このタバコだって、健康に悪いと分かってても辞められない。
変えられないモノはどうしたって変わらないモンじゃないです?
少なくとも、自分の思う通りには、ね。」
軽くなった煙草の箱を軽く振りつつ、そう話す。
「そんなものです」
「でも性格なんていつでも変えられますからね」
「それは自分のやる気次第っすけどね」
「目指したい方向の人が、しそうなことを意識的にすること」
「ね。」
「…………褒められてんだか、窘められてんだか。
イマイチ判断付かない言い方をありがとうございます。」
「まあ確かに、精神性自体は学生時代から変わった気がしませんね。良くも悪くも。
諸々の反射神経だけは昔から優れていたもので。
……オトナになる、って何なんでしょうね。」
「そんなものかね」
かくいうこのおじさんもリスクや様々を顧みたりする質ではあるけれど
咄嗟の行動に関しては間違いなく早いわけで
「若いっていうか性格と考えな気がしますけどね」
「動こうと思ったらいつでも動けるものでしょう、人間」
咄嗟な時とかそんな感じ。でしょう。
「いやぁ…御手洗ちゃんも若いよ
精神面が」
年齢は確かに20代後半だけどメンタルが若けりゃ大体どうとでもなるもんだ
「おじさんはああまで動けないもの」
「行動力の権化って。
今の子はともかく、アタシはそうでもないような。」
そうか?
あと若いっつってもそろそろ20代後半っすよ、とも添えてるかも。
「あ、マジか。……気を付けてね。」
「…………」
退田さんを追いかけて行った甜井袮さんを見送る、が。
やっぱりちょっと気にはなっているようで。闇の中を走る甜井袮さんを眼で追ってるかも。
「しょ、初対面ですけど、ちょっと声かけてきます!」
「あ、でも追いつけるかなぁ……」
無理なら追いつけなくてもいいですし無視して構いません
「大丈夫ではなさそうっすね」
「まあ。放っといても別にいいやって人ならいいんじゃないんすか」
「放っておいたら嫌とか」
「気分悪くなりそうなら追いかけたほうがいいっすけどね」
「ああ、お疲れ様です。
…………大丈夫じゃない気がするんだよなあアレ……」
新たにやってきた甜井袮さんに挨拶を投げる。
まさかシキシマさんよろしく幻聴でも聞こえているのだろうか、なんて。
「…………」
いつものカンに頼るまでもなく、どう見ても放っといたらマズいやつにしか見えないが。
無理矢理手を突っ込むほどの関係でもない、というのもまた事実なのだ。
伸ばしかけた手を引っ込める。
「気ィ付けてくださいよ、マジで!」
挨拶の代わりに、そこそこに大きな声で忠告を一言。
「ほんとにフラグみたいなこと言い残して去ってったすね?」
「いやいや。ありゃあぶねっすね〜」
「いうなら、異常に取り込まれかねないっす」
「おっと。ばんは〜」
「おつかれさまっす〜」
「……?」
何か独り言を呟いているし、咳き込んでるし。
おまけに足取りがふらついてまでいるし。
「ちょっ、……本当に大丈夫か……?」
珍しく真剣な声音だ。
「知るかよ、テメェらと一緒にすんじゃねぇよ。」
止まるつもりはない。げほげほ、と、咳き込みは止まらず。
「飯は食ってらぁ、余計な心配だ。」
力づてで止めたりしなければ、そのままホームの暗がりへと消えていくだろう。
自分の声で笑い声が聞こえてくる