ホームC
ホームの一つ。
5・6番のりばがある。
「あのねえ、気を付けねえとアンタの言う『異常者』か。
ヘタしたら異変に仲間入りするかもしれないから気を付けろ、って話をしたいんですよこっちは。」
異常者で悪かったな、と悪態をひとつ。
「ここに売ってる飯を爆食いしたらかなりマシにはなりましたんで。
心身の不調に心当たりのあるヒトは、飯はちゃんと食っといた方が良いっすよ、とは言っときますかね。」
「げぇ…… 俺に任せてくんじゃねぇよ、こんなところに居られっかよ。 ゲホッ。」
咳き込みつつ、さっさとその場を後にしようと足を動かす。
あーあ、逃げちゃうんだ。こっちに来るんだ?
「……あぁくそ、うるせぇ…。」
ぶつぶつと呟きながら、ふらふらと歩きだす。
「…アレだけ荒れてたら話しかけた時点で殴られるまでは想定内だったけどね…」
様子がおかしかったら最悪を想定すると
対処がやけに速やかだったのは攻撃される事すら想定内だったからという話
「…」
「そんな地獄絵図が………」
あっぶな〜。
「ここで変なもの見えてる人、たくさんいるっすけど」
「やっぱ精神蝕んでくるすね〜」
「侵食って感じ」
「おじさん、ここ異常者だらけなんで頑張ってください」
「…… うわ、異常者じゃねーか。」
きっぱり。
げほ、と咳き込みつつ。
「そんな異常者どもと一緒にするんじゃねぇよ。放っておいてくれ!」
さっき吸ってたタバコももう短い。
もう一本取り出して火をつけた。
「……折角なので、具体的に何があったかも教えときましょうか。
アタシは錯乱してこの人をぶん殴りかけて。
この人はこの人でヘンなのに魅入られて、霧に攫われかけたりしてましたね。」
敷島さんを指差しつつ、そんな感じの言葉を付け足す。
「何と言いますか、まあ。
助かる人は一人でも多い方が良いじゃないですか。」
かく言う自分も、正気を失いかけた時。
偶然傍に助けてくれる人がいたから助かっただけだ。
「こんな異常事態ですし。こういう時はタスケアイ、ってヤツですよ。
何かあった時はオタガイサマ、とかでも良いですが。」
「ありゃ、お三方でなんかあった感じなんすね〜」
「つっけんとんとしてるっすね〜」
「なんで勝ち組と思われるのかもわかんねっすし」
「心配も素直に受け取れないんすね〜」
眺めていた感想。
「んだよ、放っておいてくれよ。」
「テメェらの心配だけしてりゃいいじゃねーかよ。」
ふん、と。素直ではない。
「ったく…勝ち組共はいいな、周りを心配する余裕もあってよぉ!」
「いやあ、流石にあんな捨てゼリフ残して走っていくのを見たら心配にもなりますって。
アタシもシキシマさんも、あの後えらいことになったモンで。
そういえば大丈夫かな~と……」
そらまああなたとの交流こそほぼ無いが。
助かる人は一人でも多い方が良いでしょう、と。
「誰が猫だ、勝手にかわいいとか言うんじゃねぇよ気持ちわりぃ。」
げぇって反応をした。
御手洗さんには、ちらと視線を向けて。
「あ? …… あー、そういや話したか。」
「別に、俺の心配なんてどうでもいいだろ。構うんじゃねぇ。」
結果的にはあの頃とあまり変わっていなさそうである。
変わっていない、と思うが…。
「うーん、生クリームはなんとも。
そもそも甘いモンそんなに食べないのでね……」
日常的にケーキを食べる余裕は無いし、何よりそんな金があるならケーキよりも先にラーメン屋だとかに行く。
彼女はそういうタイプらしい。
「そういえば、そこのアナタは前に東通路で会った振りですかね。お久しぶりです。
……あれから大丈夫でした?」
アナタ、とは退田さんのことである。
最後に商業通路(東)で見た時の印象が残っているようだ。
「はぁ???」
「誰がお前らと肩を組むかよ。馴れ馴れしくすんな!!」
さっき言ってたことと全く違う反応である。
我儘かもしれない。
素直になっちゃえばいいのに、くすくす
「じゃあ仲間に入ってもいいんじゃないんすか」
「おいでおいで」
「生クリーム重くはないですね」
「ショートケーキとかホールで行けるっす、多分」
そんな金はないが。
「……。」
「やっぱ若いヤツらばっかりじゃねぇか、仲間外れを作って楽しいかよー?」
相変わらず悪態は収まらない。
悪態をつかなきゃやってられない。
「えぇ……29でソレは早くないすか……?」
マジ?と言いたげな顔。
こちとらまだまだ健啖家を名乗れる程度には胃が丈夫だが。ちょっと将来が心配になっちゃうね……