ホームE
ホームの一つ。
9・10番のりばがある。
「理解をする事と行動に移す間には
非常に大きなギャップがありますからねー」
「しかし人は誰しもそんなギャップを抱え
そして行動に移していますから」
「七回転んでも八回起きたら良いんですよ」
「そんなの」
「…………ですよねぇ……」
言葉に頷いて、しばらく黙る。数度呼吸をして、涙を拭く。
「………………ごめんなさい、わざわざ。でも、おかげでちょっと……というかだいぶ、落ち着きました……」
まだ、自分の中で引っかかるものはあるけれど、それでもさっきよりは、幾分かマシで。
「つまり特にそれで問題無いでしょう」
「あなたはそういう人だ」
「そしてそれを理解しているのなら、
それ以上の薬はありませんね」
「まーまー、あなたが思う程
皆それが普通とは思ってませんし」
「あなたが思う程
皆それが失礼だとも思ってないと思いますよ」
と言っても多分、
それも分かっているんでしょう。
分かっているのに
こんななんでしょうね。
「発言に責任を持つのは美徳ですが、
それは所詮“理想”の話なんですよね」
「そして全てが同一かつ平均かつ同調しながら
同意と合意と平和を同程度に持ち続けるのも、
実際は無理で無謀なんですよ」
「ごめんなさい……きゅうに泣かれてもこまりますよね……」
目をこすって涙を止めようとするけれど、中々止まらない……
「う……」
「……本当に、そうなんです。……変ですよね、すみません……」
「その……なんか……あ〜……」
「普通、皆持ってるんだなと、それが当たり前なんだなって思うと、なんか、俺は、普通になれないんだなって言うのと……」
「そのとき言っちゃったことがかなり拒絶、に近かったというか……人のこと、傷つけそうな感じの物言いしちゃって……」
「…………寂しいんだったら、ちゃんと寂しいって言えばよかったのに、まっすぐそんなことも言えないとか……そういうので……」
「……あたま、訳わかんなくなっちゃって……!人を、傷つけたんじゃないかと思うとこわくて、みんなと本当は一緒が良くって、でもそれは叶わなくって……!それにすねたような態度取ったのもいやで…………ぜんぶ、ぐるぐるしちゃって……」
「ごめんなさいほんと、へんなはなしで……おまけに泣いちゃって……」
「すみません……詰まっちゃって……それで、ですね……」
「一人に、聞かれたんです。持ってないのかって。堂々と、持っていないってそこで言えば良かったんですけど、俺そこですごく動揺しちゃって、変なこと……口すべらせて言っちゃって、それに気づいて……」
「…………逃げて、今、こんな感じです……」
「……ありがとうございます」
少し身体の強張りを緩めた様子で。息を軽く吸う。
「その、さっき……なんか、連絡先交換の話になったんです。バイト終わっても会えたら良いねって感じから始まって、皆楽しそうで……」
「……でも、俺、俺スマホ置いてきちゃったんです。置いてきちゃったと言うか、まあ……それで、交換とか、出来なくって……」
「それで……」
「えっと…………」
一度、息を吐く。
「…………はい、そうです……」
蚊の鳴くような声だった。
「で、でも全然その人達が悪いってわけじゃなくて、悪いのはどっちかというとそんな些細なことを気にしちゃった俺が悪くって……!」
「そうなんですかねー?」
実際どうでしょうなんて、
本人にしか分からないでしょうね。
多分。
「えっ」
「そうだったんですか?」
「それは本当にお疲れ様でしたねー」
「あーそれで、その続きみたいなものだと?」
「まあ、なんか減って落ち着いたような気もするんですけど……」
他から悪化して見えるのなら、そうなのだろう。
「……いやあの、実は」
「…………さっき、広場でお話ししてて、その会話の最中に、ちょっと、色々あって動揺しちゃって、そのまま飛び出してきちゃって…………」
もう我慢しないで
いっぱい食べてね……
さておき。
「うーん、そうなると悪化してるような……」
「不思議ですね、
普通は複数ある方が酷く思えるのに」
「今はそうは思えない」
「幻覚のせいだと思えないのは
どうしてですか?」
「う、ぐ…………す、すみません……」
受け取った。食べ始めるのは少し後かも……
「あ、そう、なんですね……まあ僕も、前までそういうのは見えてたんですけど……それが消えて、今はその一つ目さんだけ……って感じで…………」
「まあ、ここまで来ちゃったのって、幻覚のせいとかではないんですけど……」
「1つ目の影が1人だけですか」
あなたの視線の方に目を向けて。
でもやっぱり見えていないのですぐ戻る。
「新しいですね」
「沢山の目がとか、口がーとかは
聞いているんですが」
「……そ、う、かもですけど……」
薄く拒否はしているが、押し付ければ受け取るかもしれない。
「え、今の幻覚……ですか?」
じと、とソレが居る方を見つめ。
「…………な、なんか一つ目の影が、一人だけ?居ます……」
「余ってるから大丈夫ですよ?」
本当に余っているんですね……。
幻覚も幽霊も分からない男より、
あなたの方が必要だとは思うんです。
「本当ですかー?」
「ちなみに今はどんなのが見えてるんです?」
「あ、いや!そこまでやってもらうのはちょっと申し訳なさ過ぎるっていうか……!」
ふるふると首を振る。
「それに、だいぶ……落ち着いたので…………」
食べる様子をにこにこで眺めてます。
それで落ち着いたら良いんですけどね。
どんな幻覚かは分かりませんので。
「お弁当もありますけど
もっと食べますかー?」
「ちゃんと食べて休憩しましょう」
【道具使用】
越御絵ケイ は お菓子 を使った。
おいしいお菓子だ