ホームD
ホームの一つ。
7・8番のりばがある。
『楽ちんかも~。一生これやって稼ごうかな』
カチカチカチ。明滅とともに絶対ムリなことが響く。
『今日は……ちょっと遅れ気味だな。うっかり寝過ごしちまってさ』
『そっちはいつもこのぐらい?』
「ふふ、特別支給稼ぐのってものすごく楽ちんじゃない?」
カチカチカチとやりながら笑う。交差した光が揺れる。
「サトノボくんっていっつもこのくらいに巡回してるの?今日だけ?」
『お、そっちもか。やっぱ二刀流だよな~』
『おお』
電灯の光が向いていた方と交差するように、
光がチカチカ反射して壁に当たった。
離れた所で同じことをやっているのだ。
『お手軽怪奇現象だ。いいね。』
『〈謎の光の点滅が壁に投射!〉とでも題そうか』
「わかる、あたしも懐中電灯とトランシーバー二刀流だし。今」
言うや否や懐中電灯をカチカチやる。点く、消える、点く、消える、点く。
「さっきこれやってる人見たんだよね。人工怪奇現象仲間だと思う」
「これも報告するといい感じじゃない?」
『よ~し。これで俺の方も〈助けを求める声が響いたら〉〈笑い声に変わった〉って書けるな』
『ボロ儲けって訳だ~。いえ~い。』
『ん……いなかったな。基本ノイズオンリーだった』
『灯りなしか、懐中電灯との二刀流になって両手塞がるのを避けてんのかも。
ちなみに俺は二刀流で戦ってるね……』
「全部書くけどね?じゃあこっちも返してあげなきゃ」
「タスケテ~……あはは!変なの!」
タスケテの声と笑い声、これで二本行けたかも。
ひとしきり笑った後にトランシーバーに疑問を吹き込んだ。
「巡回中の人の声、初めてきいたの?
まあ、あんまり喋りながら歩く人いないのかな」
『ぅお …… ああ』
『はじめて巡回中に人の声聞こえたかもな』
姿は見えないまま、驚きと間をおいて普段のような声が響く。
『3本立てでい~じゃん。たんまり金に替えてくれ~』
「……ねえ!ちょっと山盛りすぎない?!」
「報告取っ散らかるんだけど!」
タスケテの声とおーいの声とウシロニイルの声。これだけで3本だ。
知った声だから盛大に笑った。
トランシーバーから笑い声が響いたかも。
『た……たす……タスケテぇ……』
『おい おい お~い…………』
『イマ……ウシロニイルノ……』
人造怪奇現象をトランシーバーに吹き込みながら歩いている誰か二人目がいた。
【道具使用】
佐藤ノボル は 簡易トランシーバー を使った。
ざざ、ざざ……
ふ~ん隠れてやがんだこいつ。
絶対このトランシーバーの声聞いてやって来たお仲間だろ。
確信持ちながら物陰に消えてくのを見送った。ちょっと笑った。
実は人ではなかった、の余地を残すためにさっさと物陰に消えた。
嘘。気付かれたな~と思ってようやく身を隠してからやるべきだったと気付いただけです。
ズルの者共、散。
「うわっ、何……」
遠くからの明かりの明滅にちょっとだけびっくりした。
そちらを見やれば……人がライトをカチカチしてら。仲間かも。
「えーっと、報告、っと……」
これで特別支給をがっぽり稼ごうね。
「お!!異常発見かも!」
「あとで報告しとこ」
タスケテ~の人工怪奇現象に引っ掛かる馬鹿、一名。
遠くからライトをカチカチ明滅させた。ダブル人工怪奇現象が発生。
今日も深夜の業務開始。トランシーバーを片手に、本日はホームへ降りたって。
「タスケテー……タスケテー……」
人工の怪奇現象を垂れ流す。業務の方がやや片手間に。
【道具使用】
キョウカ は 簡易トランシーバー を使った。
ざざ、ざざ……
「ん〜……粘ってみたけどやっぱ怪奇現象はなさそっす」
「明日起きてから出直すっすかね〜…」
つまんない!
言いながら、足は回れ右を描いた。
「これオンオフ繰り返してたら異常って勘違いされたりしないかな」
報告のための異常や異変を増やしていく。
こっすい悪戯がよ。
まあ自分が書けないから意味無いんですけどね。
それでも時折カチカチ点滅させながら巡回をするなど。
【道具使用】
八木 佐槻 は 業務用懐中電灯 を使った。
強力な光が点灯した
「……あとは~……」
来る途中で見たひっかき傷。人影がないのに聞こえるドアの音。足跡。不自然な影。あとはぜんぶ、視線、視線、視線。
「……異常ないな!」
これを当然と認めるのも、異常だろうか。
「足跡はっけーん」
巡回中、トイカメラで最近のものと思われる足跡を撮ろうとして。
「……あ?」
映り込む不自然な影。
「マジで撮れるんだ、心霊写真……」
「ん、……」
「ん……?」
「な〜んか視界の端っこに蓮根が見える気する」
カメラ片手にぶらぶら。
「いやあ、こんだけ広いと分担せな巡り切れんすね」
「…………というか、いくらなんでも広すぎではありませんか?」
「この駅、11番のりばとかってありましたっけ」
ひとつ向こうのホーム のさらにその向こうを見やり、目を細める。
勿論、そんなものは存在しないはずだが。
「都会の駅って、どうしてこんなにやたら広いんですかね」
訳:異常現象でもなんでもなく普通に迷いました。
これだから田舎モンは。
「……」
『あなた行き』の表示を写真におさめる。
「変なの」
「こういうの、は……」
「どういうギミックになってんだろ」
仕掛けであってくれよ。
頼むからさ。
足音が少し遅れて聞こえている気がする。
イヤホンとか付けてたっけ。
もってきてないか。
「……一応報告すかねえ。基準わかんね~……」
「お~……こっちの方までやるんすね」
カメラ片手に歩いて行く。徒歩通学なので電車にはあまり乗らない。
土日に友達と出掛ける時くらいのものだ。
毎日乗るとしたらちょっと嫌かもしれない。
どうでも良いことを考えた。